353log

主に映画の感想文を書いています

映画「佐々木、イン、マイマイン(2020)」感想|とある佐々木の思い出話(エモーション)

配信も解禁されたばかりの映画『佐々木、イン、マイマイン』を観ました。このポスター、どえらくかっこいいですね。本編のオープニングでもバーンと画面全体を覆う白い題字につい見惚れてしまいました。タイポグラフィとして完璧だと思う。

映画「佐々木、イン、マイマイン」ポスター

でもちなみにこの、煙をくゆらせてる男性は佐々木ではありません。『桐島、部活やめるってよ(2012)』メインビジュアルの神木くんが桐島じゃないのと同じタイプのやつです。

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video


さて、ではざっくり感想といきたいのですがその前にあらすじを。先日から「あらすじはコピペでいいや」の開き直りが発生しておりますので公式サイトより転載させていただきます。

俳優になるために上京したものの、鳴かず飛ばずの日々を送る27歳の悠二。
彼はある日、高校時代に圧倒的な存在感を放っていた同級生・佐々木と仲間たちとの日々を思い起こす。常に周りを巻き込みながら、爆発的な生命力で周囲を魅了していく佐々木。だが佐々木の身に降りかかる“ある出来事” をきっかけに、保たれていた友情がしだいに崩れていく——。

佐々木!佐々木!佐々木!(中略)佐々木!佐々木!佐々木!
佐々木コールが鳴り響く、涙と笑いに包まれる119分!

INTRODUCTION|映画『佐々木、イン、マイマイン』公式サイト

佐々木コールは間引きました。というわけで本作、とある友人「佐々木」にまつわる物語です。

タイトルから想像していたのはもっと爽やかな青春映画だったのですが、蓋を開けてみると先程のメインビジュアルにもあったような煙くすぶってる系といいますか、案外ビターな味わいの作品でございました。今泉力哉監督の『あの頃。(2021)』からオタク要素を抜いたような映画だったかなと思いました。

観た人がそれぞれにとっての「佐々木」をマイマインから引っ張り出して噛み締める、そんな愉しみ方の映画なのかもしれませんが、個人的にはあまり重なる思い出がなかったので自分語り的な感想は今回ありません(しいて言うなら、学生時代の佐々木たちが着ている学校ジャージ。あれわたしの中学校のジャージと全く同じで懐かしかったです)。

ただ、自己投影や感情移入を抜きにしてもこの作品、すごく好きでした。なんやねんと思いながら気付いたらすっかり劇中の「佐々木」に心を奪われていて、観終わった今となっては彼がマイマインにインしている気すらします。

加えて粒揃いのキャスティング、複雑な時間軸の使い方、戯曲の台詞をモノローグのように使う手法、急激に飛躍した「映画的」なラスト等々。これは映画館で観ておくべきでした。失態。

印象に残ったポイントをいくつかピックアップしておきます。まず、と言っても終盤ですが、河合優実さん演じる「苗村さん」。彼女の登場シーンってごく僅かだと思うのですけど、なんでしょうあの馴染み方。入り込み力。彼女って本作のすごくエモーショナルな部分を担っていて、あれだけ短い出演時間でありながら完全に「主要キャラ」としての説得力があるんですよ。人間力?なのか?? これからご覧になる方はご期待ください。夜明けのカラオケ外観もめっちゃエモい。

それから「赤子に同調」のシーンも印象的でした。泣き喚く赤ちゃんを抱っこしていたら一緒に泣いちゃった、ただそれだけのシーンが何故かこちらもやはりものすごい説得力があって。あんな演出、ありそうでない表現、初めて見ました。観ている側としても不意打ちなのがまた効くのでしょう。

キャスト面では、最近スクリーンで何度も何度もお見かけしている萩原みのりさん。『街の上で。(2021)』の学生映画監督、『37セカンズ(2020)』の漫画家SAYAKA、『花束みたいな恋をした(2021)』の麦くん今カノ役などなど、ヒロインから助演、脇役に至るまで「ああ!あの!」な絶対的存在感を放っている萩原さんですが、本作の「ユキ」役は初めてしっかり役者・萩原みのりを堪能できたなという気がしました。今後ますますのご活躍が楽しみです。

メインビジュアルで煙をくゆらせている男性こと主役の藤原季節さんも勿論よかったです。最初はなんか影背負ってて好かん感じなのが、ユキに「佐々木」の思い出話をする場面で初めて笑顔を見せて、ああこんな表情ある人なんだって。劇中のユキも同じようなことを言っていて。時間軸最上層の戯曲稽古シーンではまるで別人のような表情だし、役者さんってすごいのですよね。

ちなみに藤原季節さん、他にどんなの出てるのかなと見てみたら、今の大河『青天を衝け』に出ておられるようで。

あーあの! 確かまだ少ししか出ていないはずですが、吉沢亮さん演じる栄一たちとは今後また絡んでくるのでしょうか。楽しみが増えました。

てなわけで、『佐々木、イン、マイマイン』でした。なお、JR山手線田端駅からほど近いユニバーサルシアター「シネマ・チュプキ・タバタ」にて6/3(木)より日本語字幕&音声ガイド(任意)付きでの上映が始まります。

上映に向けた日本語字幕(クローズドキャプション)のチェックを担当しました。スクリーンで本作が観れるのは、今はチュプキだけ、かもしれません。お近くの方はぜひ!

(2021年74本目)

佐々木、イン、マイマイン

佐々木、イン、マイマイン

  • 発売日: 2021/04/19
  • メディア: Prime Video