映画「騙し絵の牙(2021)」感想|スピード展開が楽しい、超豪華オールスターキャスト映画。予告芸にも感服。
『騙し絵の牙』を観てきました。泣く子も黙る『桐島、部活やめるってよ(2012)』の吉田大八監督作品です。大九明子監督と名前が時々ごっちゃになります。
小説家・塩田武士さんが「主役を大泉洋で想定」して書いた同名小説を原作とし、それを実際に大泉洋主演で映画化するというなかなか特殊な経緯の作品なのですが、映画化に際してはさらに「原作から『大泉洋っぽさ』の要素を抜く」なんていうトリッキーな翻案をしているらしいです。
さてこの作品、コロナ禍の煽りで大幅公開延期となっていたため映画館の予告タイムでは長期にわたり数えきれぬほど拝見いたしておりました。開き直って堂々と「予告編詐欺」をしてくるというなかなか印象的な予告でしたが、いざ本編を観てみるとその予告芸に感服するばかりといいますか、編集次第でいくらでも別物にできちゃうのすげえなとあらためて。散々耳タコだった台詞の数々が登場するたび「文脈それ?!」っていちいち驚いてました。
本作、ざっくり言うと出版業界の内幕を赤裸々に描いたコンゲーム的な物語。ネタバレ要素が多いので多くは語れませんが、とりあえず面白いです。次々繰り出される展開!展開!展開!のテンポ感が抜群でワクワクするし、オールスターキャスト映画としても超贅沢。単純に楽しい映画が観たい日には間違いなくおすすめな一級エンタメ作品だと思います。
キャスト的にはもちろん大泉洋さん(不本意ながら主人公のサクセスストーリーが痛快)も良いのですけど、わたしが推すならやはりもうひとりの主人公・松岡茉優さんでしょう。だって彼女の出る映画に間違いはないのだ。未来のオールスターキャスト映画こと『桐島〜』にも出てますから吉田大八作品的には凱旋ですよね。
ちなみに今回の松岡茉優さん、予告だとマグカップ倒しちゃうようなドジっ娘に見えますが全然そういうキャラではないんで安心してください。全てが好ましいのだけど特に印象的なシーンは『ストーリー・オブ・マイライフ』×『アイリッシュマン』みたいな、原稿と地図とアレの絡んでくるところかな〜。電車を追いかけるシーンはありがちだけどその追っかけは初めて見たわ。
その他ピンポイントで挙げるなら「赤リュックvs金髪」のくだりとか、「ていうかお前誰だよ!」とか、國村隼さんも最高だし、池田エライザさんのエピソードも全体的に好みでございました。しいて言えば終盤やや失速したように感じたり展開にケチをつけたくなったりはしたものの、トータルで見れば十二分に楽しませていただきました。
あと劇伴! インストバンドのLITEが担当しており、全編通して非常にバキッと格好良いです。なんでも制作期間中に監督がずっと聴いていて、もはやLITE以外考えられなくなってしまいオファーしたのだとか。マスロックの機動性をいかんなく発揮して映像と密接なリンクを見せる劇伴、鑑賞の際はぜひご注目ください。
(2021年59本目/劇場鑑賞)
- アーティスト:LITE
- 発売日: 2021/03/26
- メディア: CD