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映画「ソウルフル・ワールド(2020)」感想|大人のためのヒーリング映画

映画「ソウルフル・ワールド」メインビジュアル

ようやくDisney+に加入したので、自己肯定感を上げてくれると評判のピクサーアニメ『ソウルフル・ワールド』を観た。いやはやこれは、完全に大人のためのヒーリング映画ですわね。プラネタリウムで上映してくれたら最高。

主人公はプロミュージシャンを夢見る中年男。ついにでっかいチャンスを掴んだ!と狂喜乱舞してたらマンホールに落ちて突然の死。紅葉鮮やかなニューヨークから舞台は一転、天国への階段ならぬ動く歩道に乗せられてもうすぐあの世行きという寸前でハッと気付き、やだやだ死んでたまるかと必死に逆走。しかし何故か生まれる前の世界に放り出されてしまう。

そこは肉体を持たない魂=ソウルたちがふわふわとスタンバイしている場所で、なんだかものすごく達観したキュビズムみたいなひと?たちが取り仕切っている。

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こんなの。ジョブズのソウルを感じる。

とにかく死にたくない主人公はどうにかこうにか肉体に戻ろうとするのだが、手違い等いろいろあって「生まれたくないソウル」と組まされてしまう。ぎゃあ、俺は今夜までに帰んなきゃいけないんだよう。

──といった映画。なかなか、かなり、変わっている。てっきり「俺はもうだめだ」タイプの主人公なのかと思いきやこいつ自身はバリバリ自己肯定マンで、というところからして予想外。期待は裏切らないが予想は大きく裏切ってくる、流石はピクサーである。

3DCGの進化もすごい。冒頭から早速あまりにリアルな管楽器たちに度肝を抜かれる。キャラクターは紛れもなくCGなのに、楽器はまるでCGという気がしない。風景も同様、あっちの世界の表現が非常にふわふわ抽象的なぶん、同じく3DCGで作られているはずのニューヨークの街並がえらく実写に見えた。セントラルパークから夜のマンハッタンを一気に俯瞰していくショットなどは、これ新海誠テイストと言ってもいいんじゃないか。

自己肯定映画的なところでは案外「刺さりまくって嗚咽」系ではなかったが、まあいきなり強烈にほぐされても揉み返しが大変だろうし、押し付けがましくなくてなんとなーく気が楽になるようないい塩梅だった。「きらめきは目的じゃない!なるほど!なるほど?」ぐらいのわかるようなわからんような感じがちょうどいい。

「一瞬一瞬を大切に生きる」と心新たに歩み始めた主人公だけど、多分またすぐ元に戻ると思う。でもそれが人間ってものよ。わたしだって最前列ど真ん中でYUKIのライブを観てしまったときは一週間くらい仏のような顔で生きていたわよ。

(2021年38本目/Disney+) Disney+加入にまつわる前日譚。なんとDisney+に入ると文体も変わる!(気分転換中です)

YUKI“The Present”2010.6.14,15 Bunkamura Orchard Hall

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  • アーティスト:YUKI
  • 発売日: 2010/12/01
  • メディア: CD
ちなみにわたしがきらめきを見つけた日のことはなんと円盤化されているのだ。