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映画「ブルータル・ジャスティス(2018)」感想|タランティーノ的おしゃべり地味バイオレンス映画

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S・クレイグ・ザラー監督の『ブルータル・ジャスティス』を観ました。「アトロク」ことTBSラジオアフター6ジャンクション」リスナーの方ならすっかりお馴染み、ライムスター宇多丸さん山本匠晃アナウンサーはじめ番組関係者さんたちが2020年ハマりまくった映画ですね。なお宇多丸さんの年末恒例シネマランキング〜映画に順位などつけるべきではない〜では実質1位の3位でした。

世界一S・クレイグ・ザラーの話をしている番組ことアトロクのおかげですっかり観た気分にすらなっているこの作品、ちょい長尺なので正月休みのうちに観ておいた次第です。

主演はメル・ギブソンヴィンス・ヴォーン。手荒な捜査にケチがついて無給の休職処分を受けてしまった刑事二人が、でもお金がいるんだよねってことで金塊強盗から金塊を分捕る作戦に出るお話。悪徳警官バディのド派手なアクションもの、と思いきやそういう話ではないのがミソ。

これ、宇多丸さんが評するときに「僕は大好きです! 万人にオススメはしません!」みたいな言い方をするもんで、相当クセのある映画なのかなと身構えていたんですけどそんなでもなかったっていうか、タランティーノ作品とか好きな方は全然いけるタイプの映画だと思います。要は「延々続く無意味なおしゃべり」と「残酷めの描写(臓物あり)」「救いのなさ」を楽しめるかどうかですね。『レザボア・ドッグス』『パルプ・フィクション』あたりが好きであれば全然いけます。

個人的にはおしゃべりもいいんですが、「ええっ」ていう救いのなさがいちいち好きでした。なんといってもあの細長い女性(雑)。あそこまで描いて、それ?!っていう。わけありげな描写と珍妙な職場復帰シーンを経て、それ?!っていう。人命と物語の無駄遣いが素晴らしいと思いました。

あとは何よりドライな感じ。全編通して劇伴がないのもいいんですよ。思い返せば直近で観た『ワンダーウーマン1984』にしろ『新感染半島 ファイナル・ステージ』にしろ、こっちの感情を飛び越えて過剰に盛り上げようとしてくる音楽使いがわたしはこの上なくアンチョビなのだと。その点とにかく淡々とドラマを見せてくれる本作はとっても好みでしたね。

散々ボロい車を使っておきながら最後の最後でピカピカのそこそこお高そうな車に乗り換えるのとか好きだし、ボロ車の葬り方も好き。カーステレオの音質差に対するこだわりが好き。終盤ぜんぶ好き。ショッッガーンサッファーリーも好き。わたしは普通におすすめします。途中ちょっと寝たけど。アンチョビのニュアンスは観て確認してください。

(2021年2本目/U-NEXT)

ブルータル・ジャスティス(字幕版)

ブルータル・ジャスティス(字幕版)

  • 発売日: 2020/11/02
  • メディア: Prime Video

アトロク名物コーナー「ムービーウォッチメン」で昨年評論された作品50本を全て観ているという優秀な金曜パートナーTBSアナウンサー山本匠晃さんによる『ブルータル・ジャスティス』の変態的「食レポは15:40あたりから聴けます。「映画の“食”」に対する山本アナの偏愛は本っっ当にすごい。宇多丸さんをも脅かす熱量と話術、要注目です。