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主に映画の感想文を書いています

大友克洋監督「AKIRA(1988)」を初めて観た

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TOHOシネマズにて、4Kリマスター版のAKIRAを観てきました。じつは原作含め全く初めての『AKIRA』です。いやはや、面白かった! 想像以上に凄かった! 「こんな作品が30年以上も前に作られたとは」などというありきたりな感想が、悔しいかな心の底から出てしまう納得の名作でした。

作品概要

1982年から刊行された漫画作品『AKIRA』を原作とし、原作者・大友克洋自らが監督を手掛けた長編アニメーション作品。東京オリンピックを翌年に控えた2019年の「ネオ東京」を舞台に、退廃的な(かつ実際に2020年を迎えてみたら皮肉にも現実世界と重なるような)物語が展開する。4Kリマスター版として6/25から全国のTOHOシネマズで公開中。

雑感

やっと『AKIRA』を観た側の人間になれた

例えば『レディ・プレイヤー1(2018)』でも「金田のバイク」に興奮しつつ観たことはない、そんな日々ともこれでおさらばです。今週の金ローでは堂々としていられます。やったね。

Tレックスキングコングに潰されかけながらデッドヒートするデロリアンと金田のバイク、期待した通りの「最高」を魅せてくれます。AKIRA」見たことないけど!レディ・プレイヤー1(2018) - 353log

というわけで全く初見の『AKIRA』感想いきます。

光が眩しい!

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冒頭から面食らったのが、光の眩しさ! 突き刺すようなバイクのヘッドライト、有名な「バイクズサーーーッ」における鮮やかなスパーク、ぬるっと流れるテールランプの軌跡、蛍光色にしか見えないネオンや機器の光etc...。こんなにビビッドな光の描写は見たことがないと思いましたし、すごく好きでした。

鑑賞前にこの記事を読んでいたので、そうかこれがこだわりの光かと納得。音も心地よかったです。IMAXで観なかったことを少し後悔しています。

色使いがアメコミ的!

ちょうど『ウォッチメン』の原作コミックを読んだ直後だったこともあり、特に序盤、混乱する街のシーンなどは塗りが非常にアメコミ的色彩だなと、すごく感じました。

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後世に大きく影響を与えた作品であるらしいにも関わらず前述の光やこの塗りの感じなどはとても斬新なものとして見れたのですが、フォロワーの人たちも「これをそのままやってしまうと丸パクリだから」とそこは我慢したのでしょうか。所謂エポックメイキングな作品に付き物の「後世から見るとありがちに見える」みたいなところが全然なかったのですよね。これが別格ということなのか……。

難解さとエンタメ性のバランス

攻殻』的な難解さで展開していくのかと思いきや、少年漫画的な、友情!バトル!って感じの方向へ進んでいったのが意外でした。あの老けた子供たちが出てきた時点で覚悟はしてたんですが、しかしすれすれのラインで難解にならずエンタメ性を保っている! あわや精神世界コースなんだけどぬいぐるみの愛らしさで絶妙にカバーしてる! すごい! みたいな。

鉄雄が力を得るまでの短い時間でキャラクター描写が十分になされているのも好感で(名作に向かって偉そうな)、末っ子扱いされていた彼がなにくそと仕返ししていく様は凶暴化してもなおカタルシスがあるし、そんな彼を最後まで見捨てない金田のいい奴っぷりにもグッとくるし、ていうか金田ってもっと硬派なキャラなのかと思ってたよ、ただ女のコとお茶したいだけの軽薄クンだったんじゃん、好き。しいて言えばケイがヒロインとしては薄い気がしましたが、そこは原作に描き込みがあるのかもしれません。

2020年の記念として

なんといってもこれです。2020年の東京オリンピック開催が決まってから一体どれだけ目にしてきたか分からないあの「看板」。ついに本物を見れた感慨は大きい。劇中ではさらに非常事態宣言まで発動されており、パンデミックをリアルに予想した映画『コンテイジョン(2011)』などと並んで、「今」観ることによってこそ特別な体験ができる作品の筆頭ですね。観れてよかった!

それとは関係ないですが本物というところだと、「さんをつけろよデコ助野郎」って元ネタこれだったの全く知らなくて、びっくりしました! なるほど、そういう文脈での「デコ助野郎」だったとは。もともとおでこの広いほうではあったが……。

エピローグ

ここはネオ東京だったのか……。

(2020年101本目/劇場鑑賞)