353log

主に映画の感想文を書いています

大林宣彦監督作品「ねらわれた学園(1981)」雑感

大林宣彦作品履修期間ということで、今回は1981年公開のねらわれた学園を観ました。同年公開『セーラー服と機関銃』よりもちょっとだけ前の薬師丸ひろ子が主演です。

あらすじ

学年で成績トップの由香薬師丸ひろ子は、明るく騒がしい同級生たちに囲まれて高校生活を謳歌していた。あるとき由香のクラスに転入生が加わったのだが、その転入生は初日から風紀の乱れを憂い、生徒会長に立候補し、当選。あれよあれよと学園の頂点に登り詰めた。新たな生徒会長のマインドコントロールで変わり果てた学園を救うため、由香は意を決して立ち上がる。

雑感

この翌々年に『時をかける少女(1983)』が公開されますが、本作は「プレ“時かけ”」もしくは「ジェネリック時かけ”」とでも言うのがふさわしそうな、要はかなり通じる点が多い、「作風が強い」作品で、面白く観ました。

ジェネリック時かけ

例えば冒頭、モノクロの室内にモノクロの薬師丸ひろ子、でも窓の外には鮮やかなカラーの世界が広がっていて、という映像効果。これは『時かけ』でさりげなくオマージュされていた『オズの魔法使(1939)』的表現よりもさらに直接的なそれですし、モノクロとカラーが曖昧に移りゆく映像効果もそのまま使われています。『時かけ』ラストシーンを印象付ける1回きりのドリーズームも、本作では2回(かそれ以上)登場します。

ヒロインがオカンじみた世話焼きタイプで、男友達に囲まれているところなども『時かけ』の原田知世に通じますし、序盤ではやたら快活だったヒロインが「私、なんか変なの」と突然トーンダウンしてしまうあたりも同じく(あらすじからは省きましたが彼女、超能力を持っているのです)。

f:id:threefivethree:20200508202419p:plain
マックで女子高生が…のハシリ(?)。この左側にはさらに3人も侍らせているのだ。

学校の描写ということでは、『HOUSE/ハウス(1977)』をも思わせる「やたら低年齢的で元気」な生徒たちが面白いです。おはよー!おっはよー! 楽しそう。いやんバカンうふんテイストのエッチな先生も、そのまま『さびしんぼう(1985)』の学校に赴任してそう。エッチ系だとのっけからの「透明な階段」、すごいセンスでした。

全体的にかなりチープなんですが、そのチープさはすごく「ニチアサ」っぽい! 都庁が建つ前の新宿副都心を主要なロケ地としていて、そのへんも特撮っぽかったです。ニチアサ好きな方におすすめしたい。と言ってもわたしニチアサ観ないんで勝手なイメージです。

時代錯誤ヒロイン

薬師丸ひろ子さんは今まさに朝ドラの『エール』で毎日のように拝見しておりますが、全く変わらないお方ですね! 原田知世さんや富田靖子さんのような「今でも可愛い」とはちょっと違って、とにかく「同じ顔」っていう(笑)

時かけ』と同じくこちらのヒロインもなかなか古風な子で、特に衝撃的で思わずメモしてしまったのは、両親に「もう寝るね」と言う趣旨のシーンで「じゃあ、もう今日は」と言うところ。一泊させてもらうんじゃないんだぞ!

f:id:threefivethree:20200508202622p:plain
「同じ顔」だけど可愛い。

アイドル映画ということでファッションも多様で、学校では紺のセーラー服、放課後は快活なカジュアル、家に帰るときっちり和装で、寝るときは白いネグリジェ。うん、和装が唐突なんだな。あの家おかしい。お母さん常にあやとりしてるし。

ブルース・ブラザース

ひとつそういえば好きなシーンがあって、新入部員勧誘がいつの間にか大規模なダンスシーンになっているというのがあるんですけど、これ観た瞬間に『ブルース・ブラザース(1980)』を連想したんですよね。レイ・チャールズの店の前で大勢が踊るやつ。

f:id:threefivethree:20200508203526p:plain
これが『ブルース・ブラザース』で…

f:id:threefivethree:20200508203555p:plain
これが『ねらわれた学園

時期的にも、大林監督『ブルース・ブラザース』やってみたかったんじゃないかしら、なんて思ったんですが真相や如何に。あと、神様みたいなのが出てくる白黒のシーンは先日よくわからないながらも観たベルイマンの『魔術師(1958)』を思わせるシュールさでした。

そんなわけで、終始口元を緩ませながらお気楽に観れる楽しい作品『ねらわれた学園』、結構おすすめです。

(2020年69本目/U-NEXT)

ねらわれた学園

ねらわれた学園

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
そうそう、ユーミンの主題歌「守ってあげたい」が最初にも流れてびっくり。タイトルバックで流れるとドラマっぽくなりますね。約90分と短いので気軽に観れる作品です。