気まぐれ自叙伝 わたしの音楽遍歴【第4章:吹奏楽とハイスタと】
何者でもない「わたし」の音楽遍歴をたどる暇つぶし自叙伝、第4章です。第3章はこちら。
吹奏楽部に入りドラムなど打楽器を嗜むようになった話と、それにまつわるちょっとビターな思い出の話。章題は詐欺です。
吹奏楽部に入った
小学校時代のわたしは、もちろん音楽も好きではあったが趣味としては絵やマンガを描くほうが上位にあった。上級生が選択できるクラブ活動も「まんがイラストクラブ」を毎年希望した。とはいえその希望が叶ったのは6年生のときだけで、4年生はゲートボールクラブ、5年生は卓球クラブと不本意な下積みを重ねた。ゲートボールは結構楽しかった。
そんなわけで中学校へ進学しても音楽系の部活に入る気はさらさらなかった。しかし仮入部期間のある日、校舎最上階の突き当たりにある音楽室を通りかかったわたしは、女子諸先輩方の強引な呼び込みに抗えないままなんとなくあっさりと吹奏楽部へ入部した。この展開には両親も少し意外な反応を見せた。
結果的にこの日から現在に至るまで約20年間、わたしは吹奏楽を続けている。まさか自分にとって吹奏楽というものがこんなにも大きな存在になるなどと、中学1年生のわたしは1ミリも思っていなかったに違いない。
吹奏楽部では打楽器パートを選んだ。経験があったわけではない。管楽器を吹けるほどの肺活量があるとは思えなかったことと、そもそも楽譜が読めないので「リズムだけならなんとかなるだろう」と考えたのだ。今でこそリズム譜くらいは読めるが、初めてのコンクールは譜面に「ダッダカダカダカ」と擬音を書いて乗り切った。
ちなみに課題曲からジェネレーションを感じ取りたい吹奏楽経験者のために書き添えておくと、中学時代の吹奏楽コンクールで演奏した課題曲は「マーチ・グリーン・フォレスト」「をどり唄」「栄光をたたえて」の3曲だ。また初めて大舞台でスネアドラムを叩かせてもらった思い出の曲は、中1の自由曲「ホープタウン・ホリデイ(S.ライニキー)」。コンクール前に地元のホールで開催される連合音楽会というプレ・コンクール的なものがあったのだが、行きのバスで緊張のあまり盛大に吐いたのもこの年である。
※新型コロナウイルス感染拡大に伴うStayHome週間のおともに、と大阪市音楽団(オオサカ・シオン ・ウインド・オーケストラ)さんが「ホープタウン・ホリデイ」を無料配信してくれていた。
高校で部活に入らなかったわたしにとって唯一の部活経験となったこの中学時代はとても楽しく、いい思い出だ。夏休みのコンクールシーズンになると先生の車で他校へ楽器を借りに行くことがあったのだが、打楽器パートの先輩後輩とぎゅうぎゅうに乗り込んだ車内では決まってユーミンが流れていた。先生におごってもらったアイスなどを食べながら聴いた真夏の「恋人がサンタクロース」には青春の匂いがこびりついており、正気で聴けない。
またはこんな記憶もある。1年目の文化祭でMr.Childrenの「Tomorrow never knows」を演奏することになったのだが、当時のわたしは流行りの音楽をほとんど聴いておらず(せいぜいPUFFYだ)、ミスチルの大ヒットソングすら知らない有様だった。そこで、カセットテープにダビングしてもらってよく聴いた。曲の序盤で気持ちよく響くクローズドリムショット、まだドラムをほとんど触ったことのない中1のわたしは、一体どうやったらこんな音が出せるのだろうと不思議に思っていた。そこそこドラム歴の長くなった今でも、クローズドリムショットを鳴らすときはこの曲が頭に浮かぶ。
吹奏楽部時代の思い出は尽きないし、吹奏楽自体は今現在まで続けている活動なので、またそのうち触れていくつもりだ。
ハイスタは叩けない
中学時代、吹奏楽部以外でひとつ印象的なことがある。同じ学年の望月くんは、イケメンのスポーツマンで、かつギターも上手いというチート好青年だった。GLAY「HOWEVER」イントロのギターソロが弾けた、と言えば分かりやすいだろう。あれを弾けるイケメンがモテないはずはない。一体あの頃日本中でどれだけのイケメンギター少年が「HOWEVER」のイントロでいい思いをしていたのだろう。ぶっちゃけわたしだって弾けたがいかんせんギタレレなので音が可愛かった。
望月くんのディティールは妙に覚えている。Ibanez系の紫色のエレキギターを使っていて、腰からぶら下げたミニマーシャルにカールコードのシールドを繋いでいた。
あれは中3の文化祭だったか、吹奏楽部のステージでわたしのドラム演奏を見た望月くんは、「こいつ、叩ける」とでも思ってくれたのか後日スカウトに現れた。突然ヒエラルキー最上位のHOWEVERメンに接近され動揺したわたしは、気付けば一冊のバンドスコアを持ち帰っていた。
忘れもしないこのイラスト。そう、Hi-STANDARD。まだロックを知らないわたしには刺激が強すぎた。それになんたって、速い。速すぎる。こんなBPMの譜面を処理する能力はない。望月くんへの返答は決まった。しかし断る勇気がなかった。放課後、人目を盗んで彼のロッカーにこっそりバンドスコアを戻した。それ以降の記憶はない。彼は今どんな人生を送っているのだろう。ハイスタからは未だネガティブな感情を拭いきれない。
次章へ続く。