タランティーノ企画オムニバス映画「フォー・ルームス（1995）」雑感

クエンティン・タランティーノがロバート・ロドリゲスなど3名の監督に声をかけ制作した4本立てのオムニバス映画『フォー・ルームス』を観ました。ちょっと過剰摂取しすぎかしら…（直近の鑑賞作品：プラネット・テラー in グラインドハウス／フロム・ダスク・ティル・ドーン）。

ところでこの作品、初見なのに強烈な既視感がありました。嬉しい既視感です。のちほど。

あらすじ

大晦日のホテル。新人ベルボーイ（ティム・ロス）はひとりで勤務をすることに。「子供、売春婦、痴話げんかには気をつけろよ」と引き継ぎを受け、彼の長い一夜が始まる。

聖夜の映画に奇跡の再会

さて、上に書いたとおり、再生開始ほどなくして強烈な既視感に襲われました。え、待って、この、妙にあっけらかんとしたトップレスねーちゃんたち、知ってるぞ……。

遡ること3年前、2017年のクリスマス。下北沢のライブバーに友人のライブを観に行ったわたし。開演までの時間、店内のテレビには無音で映画が流れていました。それはなかなか鮮烈なチープさを放っており、同伴の友人と「なんだあれｗ」と草を生やしていました。なんなら検索しまくってどうにかタイトルを見つけ出そうとすらしていましたが、分からずじまいでした。そして、今見ているのがそれだ！！！！！

そんなわけで、いつかのメリークリスマスに焼きついたあのB級映画、奇しくもこんなかたちで、わりと無理のないルートで再会することができたのでした。タランティーノの息がかかっていたとは…。

前置きが長くなりました。ティム・ロス演じるホテルのボーイが大晦日の夜に巻き込まれる4つの部屋のあれこれを、1部屋1監督で4つ連ねたオムニバスの本作。1つめの部屋は、ハネムーン・スイートで謎の儀式を執り行う若い魔女たちのお話。ボーイが彼女らに頼まれた「ルームサービス」とは…？ 本作中、最もくだらないエピソードです。そもそも「再生開始ほどなくしてトップレスねーちゃん」の時点でお察し。

2つめの部屋は、いちばんシュール。人違いでいきなり銃を突きつけられっぱなしのボーイくん。かわいそす。見どころは終盤、とてつもないバリエーションで披露されるナニのスラングですね。

3つめの部屋は、これは1つめの部屋とあわせて聖夜の記憶にすごく残ってるんですが（逆に2と4は見た記憶すらない。もしかして1と3だけ流してた…？）ロドリゲス監督が担当した「かわいい無法者」という一本。何がかわいいってね、子供が超絶かわいいんですよ！！ みてこれ！！

500ドルのチップと引き換えに子守を任されたボーイくんと、反抗的な子供たちの対決エピソード。ふたりともかわいいけど、やはりお姉ちゃんの挑発的な感じがね、刺さりましてね。なにか目覚めそうになってしまった危ない思い出ですよ。せっかくなのでもう何カットかおすそ分けです。

足を嗅げ、と弟に命令しているシーンなんですがね、そのシチュエーションからして変態が過ぎますよね。ロドリゲスちょっとあんた、すげえよ。さらにこの「なぜ足を嗅がせることになったか」に絡んでくるオチが強烈で。これは記憶になかったので驚けてラッキーでした。さりげなく、うまい作り方してんじゃねえよと思いましたね。

そういえば『プラネット・テラー』でベビーシッターに対する不信感を滲ませていたロドリゲス、この作品でも「ベビーシッターは信用できない」というセリフが出てきます。なにかあったんでしょうか。

最後の4本目はタランティーノ担当作。タランティーノ本人が主演していますが、このタランティーノはひたすら映画のうんちくを語り倒しているだけで変態度は低め。引っ張って引っ張って引っ張ってドカン、な、観終わってみればとても正統派タランティーノらしい一触即発コメディとなっております。狙ってかそうでないのか字幕の和訳がカタコトで、それがむしろ深夜テンションの作風とよく合っていて可笑しい。

あと、オープニングとエンドロールに流れる曲、これ驚きでした。きっと聴いたら多くの人が「知ってる！」となるであろう曲。

缶コーヒーのCMに使われてた、くらいしか調べても出てこないんですがなんかもっと有名な番組のテーマ曲とかに使われてそうな気がする…。タモリ倶楽部みたいな…。てっきり既存の曲かと思いきやこの映画のための曲だそうで。オープニングのアニメもかわいい。

4つ合わせて100分弱とコンパクトな作品です。お気軽にお楽しみいただけます。ロドリゲスの「3部屋目」だけでも、ぜひご覧ください。この作品でもやっぱり女の子がいちばん強いのだ。ロドリゲス、いいですね。

（2020年58本目／PrimeVideo）

フォー･ルームス (字幕版)

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