353log

主に映画の感想文を書いています

「スキャンダル(2019)」雑感

f:id:threefivethree:20200222103038j:plain

シャーリーズ・セロンニコール・キッドマンマーゴット・ロビーという超豪華女優陣の競演で賞レースも沸かせた映画『スキャンダル』、観ました。

概要

アメリカ最大のニュース専門チャンネル「FOXニュース」内部で2016年に起きたセクハラ告発を描いた作品。このスキャンダルによりFOXニュースは、創業以来掲げていたスローガンの「公平公正」を降ろした。

雑感

予告編というのはどんな作品でも同じようなエンタメ作品に見せてしまうものですが、『ハスラーズ』『チャーリーズ・エンジェル』そして本作と並んだ日にはどれがどれやら、そんなここ最近の予告編タイムでした。もちろんどれも違うんですけどね。

さて、ということで本作はというとかなりの社会派ドラマでした。報道のトップたちが集うテレビ局が舞台、そこは当然もう頭の回転がずば抜けた人たちばかりなわけです。編集のテンポも速く、現代の社会情勢に疎いとあっという間に置いていかれることでしょう。わたしのことです。

とはいえ、置いていかれつつも特にその冒頭は映画としてのつくりが巧みで、主人公のひとりシャーリーズ・セロンが第四の壁を破って局内をナビゲートしてくれる「3分でわかる、これがFOXニュースだ!」みたいなコーナーがとても高揚させられるものでした。音楽がまた良かった。

序盤は3人の主人公たちを紹介しがてら、大統領就任前のトランプ痛烈批判というある種キャッチーなネタから勢いよく始まります。現役の大統領をここまでコケにした映画、それだけでまず強烈!

ですが、その痛烈批判がもとでシャーリーズ・セロン演じるトップキャスターのメーガン・ケリー(実在の人物)はさすがに身の危険を感じるようになり、形式上トランプ側と和解します。爆弾に巻き込まれるのはごめんだわ、そう思い直したところでのスキャンダル勃発。ニコール・キッドマン演じるベテランキャスターのグレッチェン(こちらも実在)が、会長のロジャー・エイルズ(やはり実在。死去後まもなく本作の製作が開始された)から受けていたセクハラを告発したのです。

レッチェンは不本意に解雇された直後で、この告発によりFOXニュース内部の女性たち、特にメーガンなど影響力の大きい人間に立ち上がってもらう狙いでした。局内では実際セクハラが横行しており、メーガンも間違いなく被害者であったのです。しかし思惑に反し沈黙を続けるメーガン。理由はまずひとつ、直近の教訓により「爆弾」に巻き込まれたくなかったこと。それからもうひとつ、セクハラを受けたのは事実だが、今の自分の立場はその上に成り立っていること。つまり、もう地雷の上に座ってしまっているような状態であるということ。立ち上がるにはとてつもない勇気が必要でした。一世一代の勝負に出たグレッチェンはこのまま虚しく敗北してしまうのか。それとも── というお話。

邦題は『スキャンダル』ですが、原題は「爆弾」を意味する『Bombshell』。別に『スキャンダル』でもそんな悪くはないさねと思っていたものの、実際観てみるとこれは『Bombshell』だなあと。しかもこのワードにはスラング含め複数の意味があって、本作の要素を一語で全て言い表したものなんですよね。悪い邦題とまでは言わないまでも、なんかちょっと惜しいなあと感じてしまう点でした。

本筋の感想に入れ損ねましたがマーゴット・ロビーも大事な役どころで、一番若い世代なりの視点や動きを担っています。また、会長ロジャー・エイルズを演じるジョン・リスゴーも、本作の大きな敵ではありながら一目瞭然の悪役として描かれるわけではなく、……というかこれに関して言うと、このジョン・リスゴーさん、Netflixドラマシリーズ『ザ・クラウン』でウィンストン・チャーチルを演じてたんですよ! んで本作の特殊メイクが方向性ほぼ同じなんですよ! チャーチルって人好きのするキャラクターじゃないですか! とてもじゃないけどウィンストン fxxkin' チャーチルとは思えないわけですよ! 複雑! ミスキャスト!笑

とまあそんな感じの作品でございました。物語の上で爆弾は一応処理されるのですが、そのあとに平和が訪れたのかというとそうではなさそうな後味を残して映画は幕引きとなります。

(2020年31本目/劇場鑑賞)

スキャンダル (字幕版)

スキャンダル (字幕版)

  • 発売日: 2020/04/29
  • メディア: Prime Video
スキャンダル [Blu-ray]

スキャンダル [Blu-ray]

  • 発売日: 2020/08/05
  • メディア: Blu-ray