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主に映画の感想文を書いています

「花とアリス(2004)」雑感

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岩井俊二週間、古い順に有名タイトルを観てきてそろそろ一段落かなというところになりますが、花とアリス観ました。出演は蒼井優鈴木杏、ほか多数。

あらすじ

高校一年生の花鈴木杏は、憧れの宮本先輩郭智博を追いかけて同じ部活に入った。中学の頃からずっと好きだったのだ。その帰り道、本を読みながら歩いていた宮本は不注意から頭を強く打って気絶してしまうが、後ろを尾けていた花が慌てて駆け寄ると幸いすぐに意識を取り戻した。そこで花は妙案を思い付く。「先輩私のこと覚えてますか? 」「じゃあ私に告白したことは?」「先輩やっぱり記憶喪失ですよ」

記憶喪失ということにされ、半信半疑のまま花と付き合うことになった宮本。そんな折、話の流れから「元カノ」の存在が必要になり、花の親友であるアリス蒼井優が宮本の元カノだという設定になる。全く覚えのない過去を知るためアリスに近づく宮本と、親切に「フリ」をしてあげるアリス。しかし宮本は次第に「元カノ」への気持ちが戻ってきたと思い始め……

雑感

可愛げはあるけどなかなかに悪質な洗脳ラブストーリー。こわ! 花こわ!

でも結構おもしろいですよね、この手口。もしも、一方的に知られている相手から言葉巧みに突然こんなことを言われたら、あながち…くらいには思ってしまうかも。いやそれ以前に怖いな。ないな。

というわけで大筋はあらすじに書いたような話です。軽いテイストで騙し騙されの三角関係ラブストーリー、シュールで楽しいです。『リリイ・シュシュのすべて(2001)』から続けて観ると、蒼井優が高校に上がった!っていうだけで嬉しくなっちゃいますね(※二作品に関連性はありません)。

岩井監督の他作品に比べて、はっと目を奪われるようなシーンは少なかったですが(そもそもが百合めいて美しいので。二人称「きみ」とかあざとすぎるよね)、強いて挙げるなら冒頭の「乗るの?」「乗らなーい」ってところ。閉まりかけた電車のドアから間一髪飛び出してくる花のタイミングが絶品でした。勢いだけで生きてる感じ、最高。失敗テイクが見てみたい(笑)

リリイ・シュシュのすべて』撮影時のエピソードで、映画デビューだった蒼井優に岩井監督が「どんな女優になりたいのか」と訊いたら「こんなの人生の思い出作りですよ」なんて返されちゃった、というものがあるようですが、この映画はまさに「人生の思い出づくり」を撮った作品かもなあと感じました。

劇中で花とアリスはいろんなことをします。落語研究会に入り、バレエ教室に通い、芸能事務所にスカウトされ、外国語に触れ、etc。でも、朝ドラのようにそれぞれが将来に直結するわけではおそらくなく、彼女たちにとっては単にその時々の思い出づくり的なものなんだろうと思います。

それは恋愛も同じで、20代後半くらいになってくると「交際」には「結婚」がちらついてきますがこの頃はまだ軽い気持ちでできること。好きなように付き合って別れればいいわけです。これもまた思い出づくり。

三角関係ラブストーリーの占める割合が比較的大きい作品ではあるものの、花とアリスの二人だけできゃいきゃいと始まったこの映画は、結局のところあれだけ騒いでたセンパイそっちのけにまた花とアリスの二人だけできゃいきゃいと、またひとついい思い出をつくって幕引きとなるのでした。

ちなみに、2017年の再上映イベントでは蒼井優さん、こんなこと言ってます。

─アリスは、あのまま芸能界か何かに入っているんだろうかとか?

いや、絶対になっていないと思います(笑)
なんか適当な人と結婚して、離婚しているんじゃないですか?(笑)


少女・蒼井優&鈴木杏が演じた『花とアリス』 – NB Press Online

現実はしぶい(笑)

(2020年20本目/PrimeVideo[日本映画NET])

花とアリス

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  • 発売日: 2014/06/20
  • メディア: Prime Video
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短編版未見。前日譚のアニメ作品『花とアリス殺人事件(2015)』は観る予定。→観ました。