スコセッシ週間入っております。今回は『アイリッシュマン』からと言うよりも『ジョーカー』からと言ったほうが良さそうです。
あらすじ
コメディアンとして大成することを夢見るルパート・パプキン(ロバート・デ・ニーロ)は、憧れのテレビ司会者ジェリー・ラングフォード(ジェリー・ルイス)にデモテープを聞いてもらう約束を取り付けた。膨らむ妄想、エスカレートする行動。常軌を逸した手段でルパートは番組出演を叶えるのだが──
ジョーカーか否か
先日の『ジョーカー』公開時から何かと耳にすることの多かったタイトルです。ざっくり言うと「似ている」。これについては実際かなり意識して作られたとのことで、さらに『ジョーカー』ではデ・ニーロがテレビ司会者役を演じているというメタ的なキャスティングもあり、合わせてお楽しみください、といった位置付けの作品になるのでしょう。
観てみると確かにとても共通点の多い作品でしたが、個人的には『ジョーカー』ほどの怖さを感じなかったことから、そこまでジョーカーではないな(逆)、という感想になりました。『ジョーカー』が「うわ…(うわ…)」だとしたら本作は「うわ…(笑)」で、まだ笑えるんですよね。『ジョーカー』は笑えなかった。人が死ぬかどうか、ですかね。
本作では主人公がイカれたファン仲間の女性と手を組んで「誘拐」を企てるという展開があり、常軌を逸しているのが一人だけではないというところもコメディ色が強まった要因かもしれません。あのストーカー女はいい具合に怖かった。お楽しみの儀式シーンは笑っちゃいましたけど(あくまで笑える塩梅というところが、やはり『ジョーカー』と違う)。
対して、『ジョーカー』と非常に似ているのはトークショーにまつわるシーン全般。居間の家具配置がいつしか意味を持って見えてくる『ジョーカー』での演出とはまた違う趣ですが、スタジオを完全再現したような主人公の狂気な自室が最高に良かったですし、実家なもんで時折おかーちゃんが「ご飯できたわよ」とか邪魔してくるの爆笑です。34歳…痛々しい年齢設定…。
また、妄想が入り混じる感じもよく似ていますが、こちらのほうが分かりやすい妄想。唯一境目の曖昧なラストも個人的には現実かなと思って観てはいたものの、喝采の中いつまでも言葉を発さない主人公が不気味だったので妄想に一票。「一夜の王」で十分。パリッとした服を着て心から大物のように振る舞えば虚言癖の奇人でも案外通っちゃうかもしれない、というのは結構怖かったです。
振る舞いといえばデ・ニーロ。表面上はせいぜい口ひげを付け加えた程度でありながら、とてもあのロバート・デ・ニーロとは思えない怪演&快演。役者ってすごいんだなと。
怖いは怖いけれど『ジョーカー』ほどの怖さはない作品なのでお気軽にご覧いただけると思います。
(2019年145本目)
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