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主に映画の感想文を書いています

映画「イエスタデイ(2019)」けちょんけちょん雑感

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映画「イエスタデイ」を観てきました。おーっと、これは。

キツくならないよう気をつけたつもりが結局けちょんけちょんにしてますので「よかった!」という方はあまりお読みにならないほうがよろしいかと…。きわめて個人の感想です。

あらすじ

売れないミュージシャンの主人公ジャックは、ひょんなことから「自分以外誰もビートルズを知らない世界」に取り残されてしまった。何気なく「イエスタデイ」を爪弾いただけで、戸惑いと尊敬の目を向けられる始末。次第に状況を飲み込んできた彼は“未発表の名曲たち”を携えて世に出ることを目論む。

設定のおもしろさは抜群!

なのに!!!!! というのが感想の主なところです(笑) まずはこの予告をどうぞ。

面白そうですよね、かなり。「ビートルズ」とググッたらカブトムシしか出てこない、っていう1〜2秒のシーンで世界観を説明してるのとか見事ですし*1 とても秀逸な予告編だと思います。予告編部門では今年のベスト級です。

ただ、これ以上のことが起きないですね。予告編詐欺ではないのだけれど、むしろ予告編にあったとおりのことしか基本起きなくて、ていうか予告編の1分半が一番よかったぞ〜!というタイプのやつでございました。まあそれは別に悪いことでもないか。もう一度褒めておきたい、予告編はめちゃくちゃ面白い!

惜しい、惜しい、惜しい、3点!

っていう感じでした、個人的には。とにかく設定はおもしろいんですよ、いくらでも超名作にできそうなのに、いちいち惜しい、全てがもったいないんですよ。

いわば、「こんなアイデアどうかな?」って提示されて「いい!めっちゃいい!総ナメ!」って食いついたら「まあ、それだけなんだけどね。じゃ、こんなアイデアどうかな?」みたいなね、ただ次々アイデアの断片だけ見させられたようなね、初稿じゃん!いやラフじゃん!っていうね。新人ならまだしもベテラン監督脚本チームのお仕事クオリティではないよな…と。

例えば、思い浮かんだバンド名を次々と検索していくと「オアシス」が存在しない。「そうきたか…」と状況を飲み込んでいく主人公。わたしオアシス全然通らなかったのでビートルズとの関連性は知らないんですけど、でも文脈として理解はできるじゃないですか。この「音楽史タイムパラドックス」の部分とか、かなり知的好奇心をくすぐられるおもしろさで、映画的にも「そうきたか…!」と前のめりになれるところじゃないですか。なのに、小ネタのちょい見せで終わってる感じがあるんですよね。

または、記者会見で突然「黄色い潜水艦」が掲げられたときの、ゾワッとくるサスペンス感。あんなに怖いイエローサブマリンを初めて見ましたよ。ここまで意外と地続きで来たのに、ここにきて現実か妄想か分からなくなって、さらにコーデンさんのトーク番組*2でもおかしなことになる。うわあ、楽しいことになってきたぞ。と思ったらせっかくの「そうきたか…!」をやはりまた野放しにしちゃって、なんなのよもう。

でもまあ、百歩譲って、あの二人から「(ビートルズの名曲たちを)大切に使ってね」と言われるシーンで、ああそういう方向にいくのか、すごく素敵だな…と思っていたら、音楽映画じゃなくて恋愛映画に着地するところとかですね。愚!ですよ!愚! もともと音楽映画じゃなかったのかもしんないけどさ! 大切に使えよ! もっと! ビートルズの名曲たちを! お目覚めスッキリなシーンはどうでもいいわ!

グギ…このへんはね、観客にそういう怒りを起こさせることでふと己を見つめ直し、そういえばビートルズのこと軽んじてたかもしんない…と戒めを与えるものなのかもな!とか思いましたけど多分絶対そうじゃない。この脚本に限って絶対そうじゃない。

あとね、やっぱりわたし「アリー/スター誕生」でもそうだったんですけど、リハなしのライブシーン(各種演出・バンドアレンジあり)ってのが超嫌いですね。ナメとんのかと。タブレットでポンっと「あいよ!」みたいなのも嫌いですね。大切に扱えよ! ビートルズ様のデータを! それに違法だと知った上でダウンロードするのは犯罪だってみんな映画泥棒さんから教わってるでしょ! 違法にならないのかもしんないけど!

そーれーかーらー何よりあのシーン、茶番諸々ファックユーなのは間違い無いんですけどそれ以上に、あの茶番をやってるのエド・シーランのライブなんだぜっていう。人様のライブやぞ。人様のライブの終盤をスキャンダルで汚して、おまけに違う人様の女まで奪ってるんやぞ。ていうかビートルズ以前にリリー・ジェームズ様を大切に扱いなさい。一度手放した女性が戻ってくると思ってはいけません。ジョンも変なこと吹き込まないでください。

ちょっとね、荒くなった呼吸を整えつつね…。あのー、オブラディとかなんなんすかね。どういう立ち位置であの曲を歌ってるんですかね。平穏な日々を送れてる意味がまずちょっとよく分からないですけどね。ハッピーエンド風に終わりやがって、最後で尺調整しやすいからみたいな理由で選ばれてそうなヘイ・ジュードを雑に流して、そのくせラストの無音はなんなのヨルゴス・ランティモス監督作品なの。雑!めっちゃ雑!全てが雑!

これなら、いくらベタだとしても夢オチのほうがよっぽどマシだったと思うんですよ。他の作品と比べたくないけど、「ミッドナイト・イン・パリ」みたいな感じだったら好きになってたかもしれないのに…とか考えちゃいます。

でもなんかまあ結局、ね、モヤッとした気持ちをグツグツ煮詰めていたら結構楽しくなっちゃって。罵詈雑言並べ立てながらイエスタデイの嫌いなとこ100吐き出したらめっちゃ楽しいだろうな〜なんて思いながらこれ書いてました。すごく楽しい映画だったかもしれません。ジャックに卵とか投げつけながら観たい。「そんな男やめとけ上映」したい。

それとこれもなんかすごいムカつくんですけど、なんだかんだ丸一日ビートルズの曲がぐるぐるしてたので映画にしてやられていたのかもしれない。ビートルズのいる世界でよかった(終)。

よかったところ

エリナ・リグビーの歌詞思い出せないところがよかったです!

(2019年127本目/劇場鑑賞) エスタデイと聞くとシューマイコンソメサラダが続いてしまうお客様はいらっしゃいませんか。

*1:ゴジラ」で1件しかヒットしない「シン・ゴジラ」の世界観と同じですね。

*2:きっとみんな「ジョーカー」を連想したあのシーン(本国公開はこっちのほうが先だけど)。逆ノック・ノックしちゃえばよかったんだコーデンさん。