353log

主に映画の感想文を書いています

ミッドナイト・イン・パリ(2011)

f:id:threefivethree:20190722204637j:plain

ウディ・アレンが好きですとか言いながら観てなかったんかい、という感じですが観てなかったんです。正確には、「ウディ・アレンだと思ってなかった」。いやなんか、全然ウディ・アレンっぽくなくないですか、まとう雰囲気が。普通にいい映画っぽいし。

そんなわけで初見の「ミッドナイト・イン・パリ」、まさかの普通にいい映画でした! ウディ・アレンこんな体裁のいい映画作れるんだ…!

どんな映画か

オーウェン・ウィルソン演じる本作の「ウディ・アレン的主人公」は、古き良きパリに思いを馳せるアメリカ人。婚約者と共に休暇でパリを訪れた彼が、どういうわけか1920年代のパリにタイムスリップしてしまう物語です。

解せないながらも憧れの時代へ迷い込んでしまった主人公は、ヘミングウェイなど名だたる文化人たちに遭遇し、恋にもおちてしまいます。しかしその時代にとどまれるのは真夜中の数時間だけ。毎晩、12時の鐘を待って彼は1920年代へ通い詰めるのですが…。

ウディ・アレン×パリ×タイムスリップの化学反応

ウディ・アレンがニューヨークじゃなくてパリっていうだけで新鮮なのに、さらにタイムスリップというファンタジー要素まで加わることによって、こぢんまりしがちなウディ・アレン「らしからぬスケール感」が出ている異色作。

現代パートでのインテリなダブルデートとか、オーウェン・ウィルソンの佇まいとか、どう見てもウディ・アレンなところはもちろん多々あるわけですが(というか全体がそうではあるのですが)、パリで、しかも1920年代で…っていうだけでここまで変わるかと驚きました。これはヒットしたのも納得。

タイムスリップの仕方もさらっとしていて、小難しいことなしに行って帰ってくる、それだけ。その塩梅がすごくうまいなあと。大長編ドラえもんでも観てるような気分でした。畳剥がしてあっちの世界へ行って、ママに見つかる前に「また明日ね」と帰ってくる。授業では寝てて怒られる。あれくらいの《SF=すこし・ふしぎ》な世界観。

「僕の考えた最強の1920年代」

行った先の1920年代で主人公が遭遇するのは、ひたすらに都合よく著名な文化人ばかり。常々「いいなあ、あの時代に生まれたかったなあ」と膨らませていた純度100%の妄想がそのまま具現化した世界。家族に会うとか自分に関わる問題を解決するとか、映画の世界ではそういった展開・目的のタイムトラベルが多いと思うのですが、100%趣味に走ったタイムトラベルなのがウディ・アレンっぽいと言えるのかもしれません。

ヘミングウェイフィッツジェラルドトム・ヒドルストン!)、T・S・エリオットコール・ポーターピカソ、ダリ、「名前は知ってる」人たちが次々と出てきます。恥ずかしながら殆ど「名前しか知らない」程度だったわたし。何よりまず思ったのは「みんなこの時代の人だったんだ!」っていうことで、このおかげで忘れずに済むと思います(笑)

フィッツジェラルドは「グレート・ギャツビー」の人だ。奥さんのゼルダのファッションは「華麗なるギャツビー」でキャリー・マリガンが演じてた役のと同じだな。こういうスタイルはフラッパーっていうのか。T・S・エリオットはパッと出てこなかったけど「キャッツ」の人ね! コール・ポーターはむしろ分かる。ピカソのあの絵は架空の作品っぽい…? なるほど禁酒法でお酒飲めないから当時「パリのアメリカ人」が多かったのね。などなど勉強になりました。

自分だったらどうだろうと考えてみましたが、同じ1920年代ならアメリカで舞台役者やってる頃のアステアを観に行ってみたりしたいかなあ。生でガーシュウィンを聴いたりとか。そう考えたらすごいわくわくするなあと思いました。本作に舞台や映画まわりの著名人が殆ど出てこなかったのはこれもウディ・アレンの趣味というか、別に会いたい人がいなかったんですかね(笑)

わかりやすくて健全なメッセージ性

終盤、唐突に、しかし極めてシームレスに急展開が起きます。これ「すげーーーおもしろい!!!」と感動しちゃったので一応伏せときますけど、ハッとさせられる展開でした。

現在に生きる我々が「いいなあ昔の人は…」と過去を羨むとする。じゃあ「昔の人」たちは「今が最高!」と思っていたのか? 否、やはり同様に「いいなあ昔の人は…」と羨んでいただろう。「“現在”って不満なものなんだ。それが人生だから」

すごい……健全な映画作るじゃん……ウディ・アレン……。

過去に逃避することは結局しなかったけれど、「今を生きるんだ!」ということで主人公は婚約を破棄し、パリへの移住を決め、新たな人生を始めることにします。ここでまた、レア・セドゥの「運命の人」感がすごいんだ! こんなに体温を感じるレア・セドゥ初めてだよ! わたしもこんなレア・セドゥにポンヌフで偶然ばったりする人生したいよ!

f:id:threefivethree:20190722201842j:plain

観光映画としてのミッドナイト・イン・パリ

なんか、最近そんな記事を書きましたが(笑) アメリカ人の撮ったパリだから新海誠の撮る東京とはちょっと違いますけど、でも過剰なほど魅力的な描き方をしているという点では通じるものがあります。

ジャズを流しながら贅沢に尺を使ってパリの名所をひたすら見せるだけのオープニングは、「マンハッタン(1979)」のオープニングを思わせるものでした。

あちらも「ラプソディ・イン・ブルー」を流しながらのニューヨーク名所案内、モノクロなのになんだこのえげつない魅力は…!っていうやつで、ニューヨーク好きには目の毒だったもんです。対する本作、やはりえげつなく魅力的にパリの街並みが映し出されておりまして。観終わったあと思わずパリ行きの航空券相場を調べてしまったほどでございます。

まだニューヨークほど惹かれてはいないものの、一度くらいはパリ、行ってみたいです。いつか行くことになったら、その際はパリな映画をひたすら貪ります。そうそう、劇中で主人公が映画監督のルイス・ブニュエルにプロットを提案している映画こと「皆殺しの天使」、観たかったんだけどprime videoに購入しかない…。ディスカス再開したら観よう…ディスカスにもなかった…)。

(2019年69本目)

主要な配信サービスでは多分どこでも観れるんじゃないかと思います。prime videoは2019年7月現在会員特典です。