「女王陛下のお気に入り(2018)」のヨルゴス・ランティモス監督作品。先日鑑賞した過去作「ロブスター(2015)」があまりにも運命的なストライクっぷりだったので(感想記事)、ヨルゴス・ランティモスさん大好き……推せる……と這いつくばりながら他の作品も漁っているところです。
どんな映画か
ヨルゴス・ランティモス監督はとにかく設定がおもしろい! 決して一般受けするような映画ではないのだけれど、設定だけ聞いたら誰でも「あ、面白そう」と思えるであろうキャッチーな設定が常に光ってます。
前回観た「ロブスター」では、冒頭いきなりの「犬は?」「兄です」という会話が強烈な違和感を生み出していましたが、今回それに相応するのはやはり冒頭の光景。テープ教材が再生されるや、例えば「海」という単語についてこのような説明が流れます。
「『海』は革張りのアームチェアのこと」
「例文: 立ってないで 『海』に座ってゆっくり話しましょう」
なんのこっちゃ。でもこれが、この家の教育方針。
そう、この映画は、とある一家の異常なルールを描いています。ずばり、外界との完全隔離。3人いる子供たちは、もうハタチも近そうな外見をしていますが一度も家の敷地外に出たことがありません。外界を意識させる単語には違う意味を刷り込ませてきました。この家において、「電話」は「塩」のこと。料理にかけます。
外界のことを知る由もなく純粋に育ってきた子供たち。しかし、思春期に入った長男の性欲処理のため手配された「外の女性」をきっかけに、子供たちは外界の断片と触れることになります。それもなんと、ハリウッド映画のビデオによって…。
最も「ありうる」ヨルゴス・ランティモス作品
この映画、あらすじ等には決まって「ギリシャのとある裕福な家庭の父母は、3人の子供たちを家から一歩も外出させず、社会から隔絶させて育てていた。(Wikipediaより)」などと書いてあるんですけど、劇中ではこの設定について明確に説明されることはないんですよね。
なのでかなり意味不明な不思議ちゃん映画にも見えるんですが、でもじつはこの映画かなり筋が通っていて。こんな教育方針になってしまった理由「と思われるもの」がしっかり出てくるんです。そこを起点として思い返すと、極端ではあるものの確かになるほどそういうことね、現実にこんな一家が存在していないとは言い切れないね、というところに落ち着くこともできちゃうんです。
わたくし今この記事を書いている時点で既にヨルゴス・ランティモス監督の一般流通している作品は全て観終わっておりまして、その上で本作は「同監督作品上、最も有り得る物語」じゃないかと思ってます。
……もちろん! ものすごく、ものすごく変な映画です! こんなのが「有り得る物語」なわけねえだろ!という映画です! が! このご時世、科学的に説明のつくことであればなんでも有り得る!
温室育ちからの急展開、投げっぱなしな終わり方も超〜〜〜〜〜最高なので、予告など観てビビっときた方は是非ご覧ください。なおR指定描写多め、ネコ好きな人は要注意、です。
(2019年66本目)
- 発売日: 2013/11/26
- メディア: Prime Video
- この商品を含むブログ (1件) を見る