感想ブログは鑑賞順で基本書いてますが、これは公開終了が迫っているので早めに書かねばと前倒し。ライムスター宇多丸さんがムービーウォッチメンにて絶賛していたので観ることにした安定の宇多丸チルドレンことわたしです。
どういう映画か
五十嵐大介さんの同名漫画「海獣の子供」を原作としたアニメーション作品です。
- 作者: 五十嵐大介
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/07/30
- メディア: コミック
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一応、どういうお話かというと、舞台は主に湘南・江ノ島あたり。女子高生の琉花(るか)が夏休みに体験した「子供のときにだけ訪れる不思議な出会い」的なやつ。あとはもう、各所で言われている通り「2001年宇宙の旅」系と表現するのがわかりやすいと思います。わかりづらいってことですね。あとその、生命のうんたら系ってことですね。
だもんで結構な覚悟をした上で映画館へ向かったのですが、いざ入ってみると高校生前後のお客さんが多いこと多いこと。どういうことかというとおそらく「主題歌:米津玄師」っていうところで来てるんじゃないかと思われます。お友達と連れ立って、素晴らしいことだとは思いつつ、お兄さんが仕入れた前情報によると多分これ結構「マジ意味わかんなかったんだけど」系だと思うよ大丈夫かな…などと余計な心配も。上映終了後の空気がこわい。
そんなこんなで、鑑賞いたしました。
うまく言えないけれど
どんどん、どんどん進化してますねジャパニメーション。この分野では確実に世界一、他の追随を許さない、といったところだと思います。原作の緻密な線を再現したセル画っぽさのないタッチが全体通して印象的で、宇多丸さんも言及していた「そういう動き方するんだ?!」っていう衝撃の背景美術もすごいです。
直前にチケットを取ったため(満員御礼につき)端っこの席で観たんですけども、これはど真ん中、それもど真ん前かぶりつきで観たかったなと。字幕の心配もないんだし、願わくばIMAX最前列ぐらいの環境で観たかったなと。「海のジェットコースターや!」って感じの映像がとにかくすごくて、最前列の人たちを終始羨みながら観てました。あれはなかなか得難い映像体験だったことでしょう。
「2001年〜」系なのは確かです。この日は映画のハシゴをした2本目で、正直何度も寝ました。でもなんか、寝ることすら心地良いというか、贅沢な寝落ち体験というか、久石譲さんのミニマルな劇伴ともあいまって、寝落ちも悪くないなと思ってしまえる不思議な映画でした。うまく言えないけれど、ひと夏の不思議な映画体験をさせてくれた作品、です。
米津玄師抜きには語れない映画
エンドロールで流れる米津玄師さんの「海の幽霊」。これが、素晴らしかった…。
コーラスを重ねに重ねたとても独創的な世界観の楽曲なのですが、今の若い人たちはこういう世界観にすんなり入り込めるってことですよね。ってことはこういう映画も、そういうものだと思えば多分すんなり観れるんですよね。
仮に、いやきっとほとんどの人が「難しい映画だったな…」と思っているところにこの曲が流れて、するとおもしろいことに、これまでの「ちょっとよくわからない映画」はそれこそ「米津玄師のMV」に見えてくるんですよ。「2001年宇宙の旅だよ」と言っても彼らには伝わらないかもしれないけど、「米津玄師のMVだよ」ならきっと腑に落ちるところがあるんじゃないかと思うんですよ。
そういう意味でこの楽曲はこの映画と切り離せない存在であり、これをもって最後にようやくパッケージングされる、そんな役割を果たしていると感じたのでした。米津玄師さん、ジェネレーションギャップ代表みたいな人だったけどついにわたしも平伏する日がやってきた…。
「大切なことは言葉にならない 夏の日に起きた全て」。わたしの感想、とっくに歌詞で書いてあったじゃないか。
あ、それでその、最初に心配してた子たちのことなんですが、上映中は静かに鑑賞していて(もしくは寝てたかもね)、上映が終わるとあちらこちらから熱心な感想戦が始まったのでした。当然「難しかった」「抽象的だった」という感想もあれば、「でも映像めっちゃ綺麗だった」「久石譲の音楽がよかった」みたいな話をね、キャップ被った今風の子たちが大真面目にしてたりするわけですよ。おじさん感動ですよ。
昨年「カメラを止めるな!」で経験したような観客も込みでの映画館体験というものを期せずしてすることができて、非常に、非常〜〜に満たされました。観に行ってよかった。上映館がだいぶ限られてきていますが少しでも気になった方はぜひ劇場でご覧ください。わたしは立川シネマシティで鑑賞しました。寝落ちしてもなお、もう一度観たいと思える映画です。
(2019年64本目/劇場鑑賞)