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主に映画の感想文を書いています

アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル(2017)

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家のことをしながらYouTubeにある映画評を聴いたりするのが好きなんですが、先日「ライムスター宇多丸のシネマランキング2018」を聴いていたところ「ベストガール部門」に本作主演のマーゴット・ロビーが入っていて、そういえばこのタイトル耳にはしたけど観てなかったな〜ベストガールなら観ようかな〜という経緯での鑑賞です。ちなみに「勝手にふるえてろ」のヨシカ(松岡茉優)も入ってました。

どういう映画か

トーニャ・ハーディングというフィギュア・スケート選手にまつわる90年代前半のスキャンダルを元にした作品なんですが、これはおそらく世代の問題といいますか、86年生まれのわたしは全く知りませんでした。もう10くらい上の世代になると周知の話なのだろうと思われます。

物語の中心となるトーニャ・ハーディング選手は、トリプルアクセルを成功させた初のアメリカ人女性なのだそうです。なお「世界初」は誰かというと、日本の伊藤みどり選手。すごいですね(スケートは全く無知で、すみません)。

当時アメリカではトーニャともうひとり、ナンシー・ケリガンという選手が人気で、ふたりはライバル扱いされていました。そんな1994年、ナンシーが何者かに襲われ膝を負傷する事件が発生。そしてなんとこの事件にはトーニャが関わっていたということで、それはもうメディアを大いに賑わすスキャンダルとなった、のだそうです(語尾が全部こうなる)。

で、この映画はその「ナンシー・ケリガン襲撃事件」の真相を今一度知るべく、トーニャ本人と主犯格であるトーニャの元夫にインタビューを実施し、食い違うふたりの証言をごっちゃ混ぜにしながらコメディタッチの伝記映画に仕上げている、といった感じの作品です。トーニャをマーゴット・ロビー、元夫をセバスチャン・スタンキャプテンアメリカのバッキー。全然わかんなかった)が演じています。

スキャンダルも才能のうち

自分が全く知らない世界のスキャンダラスなスターを描いた伝記映画ということで、「ラッシュ/プライドと友情」あたりが頭に浮かびました。 こちらはF1の世界の、やはりライバル同士だったふたりの選手を描いた作品。「事実は小説よりも奇なり」を地でいくトンデモなノンフィクションです。おすすめ。

今回のトーニャ・ハーディングトリプルアクセルの件など確実に偉業を成し遂げている選手なわけですが、人々の頭に残っているのはスキャンダラスな選手だったという不名誉な記憶。でもなんか、この映画があれば、それでもいいんじゃないかなと思いました。実際わたしこれでトーニャ・ハーディングに興味を持って、YouTubeで当時の映像いっぱい観ちゃいましたからね。いい方向にスポットは当たったと思うんです。

気分は冬季ですよ。

それに、スキャンダラスな部分にも才能というのが絶対ございまして。映画でもしっかり再現されてますけど、94年のプログラムでの「映えスキャンダル」各種がすごい。名前を呼ばれても失格ギリギリまで出てこない、滑り始めるも途中で泣き顔になり滑るのをやめる、審査員席へ行って脚を台にガッと乗せる、靴紐が切れたとリベンジを請願する、もう完璧じゃないですか。

これは例えばロックスターなどでもそうですが、後世に残るスキャンダルを生み出すのも才能のうちだと思うのです。トーニャ・ハーディングという人が一世を風靡するスター選手だったことはよく分かる映画でした。エンドロールの本人映像(上に貼った、最初の動画のほう)を観ても確実に魅力溢れるパフォーマンスでしたしね。

もちろん、被害者であるナンシー・ケリガン選手のプログラムも観ました。なるほど納得の対照的な演技。ここまで明確にふたりのキャラ付けがされていると、さぞオーディエンスも楽しかったことでしょう。


世代じゃない人、どちらにせよあんま興味がない人、そんな人こそ案外楽しめる映画だと思います。詳しく書きませんけどその他登場人物各々のキャラも相当強くてヤバいです。特に母親。トーニャ以上にヤバい人。

(2019年62本目)