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主に映画のあらすじと(まとまりのない)感想文/期間限定でNY旅ブログ連載中

大アマゾンの半魚人(1954)

Amazonでこちらを購入しての鑑賞。ギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプ・オブ・ウォーター(2017)」に大きな影響を与えた、というか「シェイプ〜」が本作の二次創作であると言われるほどの作品です。近々「シェイプ〜」のBlu-rayが発売となるのに合わせて諸々の関連作品をしっかりチェックしていこうと思います。

あらすじ

アマゾンの奥地にて、水かきのついた手の化石が発掘される。独自の進化を遂げた生命体に違いないと推測した研究者たちは調査隊を組んで発掘現場へと向かう。化石が流れ着いている可能性のある下流の入江を潜水調査していたところ、生きた半魚人と遭遇する一行。そっとしておきたい者、生け捕りにしたい者、そして突然の「無礼な客人」に敵対心を抱く半魚人。攻防の行方や如何に。

あらすじで書くとすごいつまんなくなるタイプのやつ。

はい、というわけで観ようと思ってからだいぶ時間が経ってしまいましたがようやく鑑賞しました。「シェイプ・オブ・ウォーター」は、幼い頃に本作を観たデルトロ監督が「人間の女性に好意を抱いた半魚人が最終的に排除されてしまう」という本作の結論を大いに不憫と感じ、いつか半魚人を幸せにしてやるんだという熱い想いを持ち続けたまま大人になり本当に作った、っちうアツい作品らしいんですね。

そのエピソードから察するに「美女と野獣(同じく「美女と野獣へのアンチテーゼ」も原動力になったと言われている)」のような「一般的には文句なしのハッピーエンドとされている作品」なのかな、と思っていたのです。そしたらば意外にも、おそらくほとんどの人がデルトロ監督と同じ感想を抱くであろう描き方だったので少し驚きました。ラストシーンで半魚人がものすごい切ない顔をするんですよ。ものすごいかわいそうなんですよ。あの表情は忘れられません。着ぐるみなのに。

有名な小ネタですが、マリリン・モンローの最も有名な姿であろう「モーレツなことになってるスカートのやつ」。あれは「七年目の浮気(1955)」の劇中で映画館を出てきた直後のシーンなんですけども、そこでモンロー演じるヒロインが観ていたのがまさに本作となります(時代的にも最新作を観ていたことになりますね)。映画館を出た彼女は開口一番「半魚人さんがかわいそう」と漏らします。誰が観ても、天真爛漫ヒロインが観ても、明らかに半魚人がかわいそうな映画、それが「大アマゾンの半魚人」なのでした。

みどころがありすぎる

革新的な点が多すぎて感想がまとまらない。こういう時代の名作にありがちな問題です。まず最初に言及すべきなのは美しい水中撮影についてでしょうか。水中シーンのみを担当する撮影監督がいたほど、本作は水中シーンをフィーチャーした映画になっています。川底から水面を見上げる神秘的なショット、藻の絡まる水中を探索していく「水中スリラー」とでも言うべき緊張感、酸素ボンベをつけた人間と当然ボンベなどつけない半魚人の姿が対照的な「水中アクション」。「水中レヴューもの」で有名なエスター・ウイリアムズ(この少し前がブーム)の出演作などを観たことがないので比較対象がありませんが、思い浮かべる「半世紀以上前の水中撮影」より何倍もしっかりした映像でした。

水中シーンで使われる音楽がまたなかなかよいのですけど、若き日のヘンリー・マンシーニが参加していると知り、驚き。他にも何人か参加し、曲調によって分業しています。「シェイプ〜」のメインテーマがどことなくマンシーニっぽいかも〜なんて当時感想に書いていたのですけど、こんなかたちでちょっと繋がってしまうとは。音楽の雰囲気も通じるところがあるのか、ライトを点けた研究者たちが淡々と水中探索をするシーンはなんとなく「サンダーバード4号」の海中探索シーンを連想しました。


スリラー、ホラー的な映画でもあるということで、ミスリードを狙った映像作りが目立つのも特筆すべき点です。迫ってくるのが半魚人かと思ったら人間だったり、海だと思って観ていたものが研究室の水槽だったり。本作は3Dで制作・公開されていたため、観客をわっと言わせる工夫が沢山なされているんでしょうね。シネラマ用に作られた「2001年宇宙の旅(1968)」といい、テレビとの差別化を意識していた時代の映画って興味深いです。購入したBlu-rayには3D版も収録されているので、メガネをゲットしたら当時の3Dを体験してみようと思います。

ちなみに本作公開の1954年というのは日本において「ゴジラ」が公開されたのと同じ年だそうで、デルトロ監督と同じように〝KAIJU〟大好きな世界中の皆様におかれましてはスマホのパスコードとか多分1954なんじゃないでしょうか(笑) もっと言うとこの年「七人の侍」も公開されてますので、ええ、ものすごい年ですね。


水中撮影のくだりでも触れたとおり、B級っぽいタイトルに反して映像は全然チープじゃありません。基本のシチュエーションである「ジャングル」と「船」がしっかりしており、特にジャングルのシーンをちゃんとロケしている(アフリカではありませんが)というのが大きいのでしょう。

また、「ギルマン」と名付けられた半魚人のデザインも思いのほか洗練されてます。「シェイプ〜」のものと基本的に同じと思っていいです。デザイナーに関しては諸説ある印象なのですが、ミリセント・パトリックという女性が最終的にデザインしたものと現在では言われているようです。この方は女優出身だそうで、とにかくお綺麗なんですよ。彼女が半魚人を我が子のように愛でてる写真、多く残ってます。いずれも、えも言われぬ良さがあります。

お綺麗といえば紅一点のジュリー・アダムスさんもかなりお綺麗です。70年サイクルのあたりなので、今見てもファッションが全然古臭くないです。ちょうど目の前に同年公開「麗しのサブリナ」のオードリー・ヘプバーン(のポストカード)が微笑んでおりますが、同じような髪型とメイクです。ジュリー・アダムスさんは本作の「キャーーーーーーッ!!!」担当でして、いやめっちゃ上手いなと思います(笑) 漫画みたいな顔しよる。


作品に込められた環境問題へのメッセージとか米ソ宇宙開発競争の影響とか苦笑ポイントの数々とか、まだまだ書きたいことは沢山あるのですが書き疲れてしまったので主に表面部分だけの感想でおしまい。とりあえず「シェイプ・オブ・ウォーター」が好き!という方は必見です。本作の終わりからそのまま「シェイプ〜」に繋げても何ら問題ないほど、地続きのお話になっています。「シェイプ〜」はぼちぼちソフトリリース&レンタル開始ですから、再鑑賞の前には「大アマゾンの半魚人」を!ぜひ!

(2018年106本目)