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主に映画のあらすじと(まとまりのない)感想文/期間限定でNY旅ブログ連載中

艦隊を追って(1936)

艦隊を追って THE RKO COLLECTION [Blu-ray]

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フレッド・アステアジンジャー・ロジャースのコンビ5作目。これは、あれです。「シェイプ・オブ・ウォーター」終盤で登場する妄想ダンスシーンのオマージュ元です! ようやく観れた!

アステア映画はだいぶご無沙汰してしまいました。2月末くらいに「踊る騎士(1937)」を観たのが最後ですね。そのあとすぐ「シェイプ〜」を観て、まさかの「未見のアステア映画のオマージュ」にハンカチ噛んだものでございます…。あんなにいっぱい観てたのに…。

当時、ジンジャーとのコンビも飽きられてきた頃?ということで、本人達も制作へのゴーサインに慎重な姿勢をとっていたようです。そのなかで本作の制作を進めることにしたのは「アーヴィング・バーリンが音楽を担当してくれたから」だそう。そりゃ進めない手はありませんよね(笑) 当時の記録からは、バーリンガーシュウィンだったら二つ返事!という印象を受けます。正しい。

あらすじは大して重要じゃないジャンルなので割愛。いつもの感じです。とはいえ、上記の通り新鮮味が必要な時期ではあったので、「もう一組のカップル」のほうに重点を置いたストーリーになっていたり、アステアが「脱・燕尾服」で水兵さんのセーラー服だったり、ダンスナンバーのバリエーションが豊富だったり、猿が活躍したり(笑)と特筆すべき点の多い作品になっていると感じました。

「もう一組のカップル」

ジンジャー演じる踊り子シェリーの「地味なお姉さん」が二人目のヒロインとなっている本作。シェリーが「このマジメな姉さん、どうにかしてやって」とダンサー仲間に頼むと、なんということでしょう、あの地味だったメガネのお姉さんが華麗なる美女に!というビフォーアフターはなかなか楽しい展開です。アステアが妹とパートナーを組んでいる設定の「恋愛準決勝戦(1951)」もすごく好きだったのですが、きょうだいものって当たりが多いのかも。

このお姉ちゃん、死んだお父さんからの遺産としてなんと船を持っていて、お相手の水兵さんが航海士の試験に合格したら一緒に人生の船出を!と有り金はたいて船の修復までしちゃったりするも、移り気なファッキン水兵野郎は他の人妻に熱をあげてて。そんな事態を知ったアステアがまさに「ひと芝居」打つシーンなどは、なかなか凝ったシナリオだな〜と思いました。

脱・燕尾服

本作のアステアは水兵さん。「踊る大紐育(1949)」でお馴染み、水兵さんの一時上陸ワンナイトラブものです。ですが、お客が求めてるのはやっぱり「燕尾服にトップハットのフレッド・アステア」だよなあという気がしてしまいますね(笑) 唯一、冒頭で紹介したダンスシーンは劇中劇なため「いつものアステア」が見れます。当時、やはりこのナンバーが一番人気だったとか。

なお文字通りのワンナイトラブな「踊る大紐育」に対し、本作は「ラブりかけたら出港」という「会えない時間」を組み込んでるのがちょっとおもしろいところです。

バリエーション豊かなダンスナンバーの数々

これに関してはとにかく「同じことをやらない」というアステアの姿勢によるものでしょう。なかでも印象的だったのは、船の甲板でアステアが踊っていると水兵達がわらわらと登場してバックダンサーになるナンバー。ナンバーというか、タップダンス的にはアカペラと呼ばれるやつでしょうか。こういうグループダンスみたいなものをアステアで見たことがなかったように思うので(パッと思い浮かぶところでは「トップ・ハット(1935)」でずらりと燕尾服ダンサーが並んでるナンバーはありましたが、本作のはもっと現代的な雰囲気なんですよね)新鮮でした。

あとは終盤、ショウのリハーサルをするアステア&ロジャースによるサイレント喜劇的アプローチのダンス。「イースター・パレード(1948)」での有名な浮浪者ダンス(withジュディ・ガーランド)を連想しました。あのテイストのジンジャーは初めて見たかも。また、そこのちょい前で軽快なピアノ演奏を見せるアステアも流石としか言いようがありません(調律のハンドルでぐいーんとピッチベンドしてからのプレイとか凝りすぎでしょう!)。

「あの」シーン

シェイプ・オブ・ウォーター」でオマージュされたダンスシーン。劇中劇なので脈絡のないストーリーが一応存在しているのですが、「道ゆく人たちに無視され続けるアステア」「海に身投げしようとしているジンジャー」というシーンになっているようでした(身投げ先が海なのかどうかは確証持てず。でもおそらく海でしょう)。これって結構「シェイプ〜」のストーリーに通じるものがありますよね。「アステア&ロジャースのミュージカル映画へのオマージュ(パンフレットより)」として数あるダンスシーンからこれを選んだデルトロ監督、ただ好きだから選んだというより、そんなところも小ネタとして盛り込んでくれたんじゃないかなと思いました。

小ネタといえば、毎度お馴染み「フレッド・アステア自伝」によれば今作でも「ドレスの問題」があったそうで。このシーンでジンジャーが着ているビーズ製のドレスはかなり重く、なかでも“袖”のビーズは凶器であったと(笑) “凶器”はターンのたびにアステアの顔に襲いかかり、採用されているテイクでも思いっきりぶち当たってグロッキーになっているとのこと(しかも悲しいかな、命懸けで20回ほど重ねたうちのファースト・テイクが採用になっております)。そんな目線で観てみるのも楽しゅうございますよ。


まだまだ書きたいことは沢山。あらためて、アステア映画好きだなあと実感しました。あ、あと猿ね! 猿が超絶かわいいので是非観てみてください! よく訓練された猿がジンジャーに花束渡すの!

(2018年72本目)