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主に映画の感想文を書いています

ファイト・クラブ(1999)

フィンチャー監督好きだわ〜〜という気持ちを確かなものにしました。

あらすじ

主人公の「僕」はブランド物や高級マンションなどに支配された平凡な社会人。近頃は不眠症に悩まされていることから、終末期患者の慰め合いサークルに入り込んで偽善的な癒しを得る、という歪んだ趣味を持っていた。そんな「僕」の前に、正反対なキャラクターの男「タイラー」が現れる。ブランド物がなんだ、社会的立場がなんだ、そんなことのためにお前は生きてるのか? そう問われた「僕」は程なく「タイラー」と親密に交流し始めるようになり、殴り合うことで生きている実感を共有し合うサークル「ファイト・クラブ」をふたりで立ち上げる。


あらすじ書くの難しいし、感想も難しいですねこれ。しみじみ好きでした。「僕」のナレーションが淡々と振り返っていく独特のスタイル、カルトなスピリチュアル感、よいです。「彼の名はポールセン」っていうのが世界中に広がっていくあの気持ち悪い感じも最高。どこかの国の厨房でそのワードが聞こえてきたときのサブイボ感! ゾクッとするような気持ち悪さをうまく描いてくれてる映画に弱いです(最近観た「アルファヴィル(1965)」の「元気です。ありがとう。どうぞ」しかり)。

99年ということでこちらのほうが先なんですけど、攻殻機動隊SACシリーズの「個別の11人」エピソードを思い出したり、スマイルマークなビル爆破で「笑い男」を連想したりもしました。だいぶクセのある内容なのできっといろんな方面に影響を与えてるんでしょうね(それこそ9.11に、なんてのも)。あと、おそらくまだ黎明期の3DCGを使いまくってるのも印象的です。制作ドキュメンタリーでそのへんの苦労話にかなり枠を割いていますが、今なら「ペンギン作るのが大変だった」なんて話はわざわざしないだろうなとか。

改めて思ったのが「フィンチャー監督、雨降らせすぎ!」っていう(笑) まったく同じシチュエーションが「セブン」にあるんですけど、大雨のなか車に乗ってて、ワイパーかけてもかけても雨がひどいもんだから何も見えないんですよ。いくらなんでも降らせすぎなんですよ。笑ってしまうシーンです。

あと、マーラ役のヘレナ・ボナム=カーターさん、演じるにあたって晩年のヤク漬けなジュディ・ガーランドを参考にしたそうで、なんとも不名誉なガーランド…(まあ彼女はWikiの「性嗜好」なんて項目からして…笑)。このヘレナさんのこと初めて認識したのですが、ティム・バートンと交際してたのすごい腑に落ちるところがあります。監督との交際癖までガーランドと似てる。

本作ひとつめの個人的名作ポイントを「彼の名はポールセン」とすると、もうひとつはやはりベタベタにラストシーンです。真っ暗なガラス張りの部屋。男と女。手を繋いで、崩れ墜ちるビルを眺める。なーんて美しいんでしょ。

(2018年57本目)