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主に映画の感想文を書いています

ベイビー・ドライバー(2017)

気になっていた作品のひとつ。ソフト化されましたので早速鑑賞です。

こんな話

主人公ベイビーは、いろいろと事情があって少々不本意ながら逃し屋=ゲッタウェイ・ドライバーの仕事をしている。サングラスをかけてもなおあどけなさの残る風貌と、常にイヤホンで音楽を聴いているミステリアスな態度。初めて彼と組まされるワルたちは決まって「コイツで大丈夫なのか?」と怪訝な顔をするが、いざ「仕事」の段となると驚愕のドライビング・テクニックを披露して納得させるベイビーなのだった。

あとは観てください(笑)

めちゃくちゃゴキゲンなカーチェイス映画

ご挨拶のオープニング・カーチェイスがまずもう最高! ベイビーのセレクトしたナンバーに乗って、完璧かつスリリングな逃走ショーを堪能できます。ちょい地味くらいの映画なのかな?なんて思ってたものだから、まったく予想を裏切る超ド派手アクションに大興奮してしまいました。しかもこれ、ただ冒頭のツカミというわけではなく、最後までひたすらサービス精神旺盛にカーチェイスしまくってくれます。最高にスカッとします!(冒頭シーンが公開されているようなのでご興味ありましたら。スバル!)

執拗なまでに音楽とリンクした動きが見どころとなっている本作。監督のエドガー・ライトさんはもともとミュージックビデオ畑の方だったようで、なるほど、気持ちいいところをよくわかってらっしゃいます。カーチェイス時の音楽はもちろん、個人的には終盤の生きるか死ぬかな大銃撃戦で半ばギャグみたいにリンクしまくるマシンガンと音楽が大好きです。あのイカれ感は「キングスマン」みがある。

歴代iPodが懐かしい

ベイビーが音楽を聴くのは決まってiPod。気分に合わせていろんな世代のiPodを使い分けているのですが、なかでも幼いころ今はなき両親からプレゼントされたらしい初代iPodが懐かしい…!! 立方体のパッケージで、ホイールの周りに独立したボタンがついてるやつですね。あとiPod miniかな、カラー展開されたアルミボディの(しかもなんかデコられている)。こちらも超絶懐かしい。メインで使っているのはiPod classicっぽいですが、iPod touchないしはiPhoneで聴いてるシーンもあるので、15年以上にわたるアップルのiPodヒストリーを追うことができる涙チョチョ切れ映画とも言えましょう。

またこれは作中ちょっとしか出てこないのですがベイビーには「ボイスレコーダーで録音した自分への悪口をサンプリングしてラップにする」とかいうじつにイカした趣味がありまして、そのくだりが最高にアガります。ヤマハのあの電子ドラムとかね! 他にもいろいろね!

ダイナー娘とベイビーと

アメリカン・グラフィティ」的要素といいますか、ダイナーと、そこで働くステキな女の子。っていう。この女の子デボラを演じるリリー・ジェームズさんがとても可愛いです。それと、今作に関しては彼女に恋するベイビー役のアンセル・エルゴートもとても愛せる男なのです。コインランドリーでイヤホンわけっこしてケーブルの長さぶん距離を保ったまま歩き回るシーンとか、普通なら腹立たしいのですがとても好いです。デートにエスコートするシーンでのジャケット姿にゃ、キュンときちゃいました(作中唯一のフォーマル寄りファッションなのがまた)(ワインのグラスハープで音楽と合わせてくるところもおっしゃれー!)。

出てくるキャラクターみんな、まんべんなく愛せるのも本作の特徴ですね。身寄りのいないベイビーの後見人役ジョー(車椅子に手話、という表現の限られたキャラクターながらしっかりキャラ立ちしてました。彼の前だとミュージカル俳優のように全感情を解放できるベイビー。関係性がよく伝わってきます)、極悪人なのに親身なドク(よくない方向で話題のケヴィン・スペイシーですが、とはいえよいですね…)、強盗チームのバッツにバディ(特に終盤のバディ! 惚れる!)、んー、お見事です。


てな感じでですね、書き始めたら結構止まんなくなりそうなくらい、よくできた、いい映画です。音楽絡みのことに関しては、町山智浩さんの新著にとても「そうだったのか〜〜〜!!!」となる解説があったのでぜひ読んでみてくださいませ。クイーン「ブライトン・ロック」が含んでいる意味(デボラの献身の秘密から、バッツの殺られ方までも)、目から鱗です。

というわけでちょっと記念すべき今年の50本目でした。

(2018年50本目)

追記: 冒頭シーンの原型となったMV

エドガー・ライト監督が2003年に製作したミュージックビデオ。なるほど完全に原型ですね! たくさん入るCDケースとCDウォークマンが超絶に懐かしい…。絶対あれ音飛びするでしょ…。