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こんな映画
1960年代当時のパリ市街で撮影され、あくまで台詞回しや演技だけで「未来」を演出している、とても特殊なノワール系SF。物語の舞台である近未来の都市アルファヴィルにおいて、人々はα60というコンピューターに全てを管理され、感情や思想を持つことすら禁じられていた。「外部の国」から諜報員として送り込まれた主人公レミー・コーションは、α60を破壊し、人々に感情を取り戻そうとするが──
っていうお話です。65年だけど思いっきり白黒。そしてジャン=リュック・ゴダール、お名前は常々! 初のゴダール作品でした。難解で有名なゴダール作品のなかでもかなり分かりやすいほう、らしいです。確かにぎりぎりついていけるレベルだったけれど、これでイージーモードなのか…。
感想としては、とてもおもしろかったです。観た翌日もひたすら映画評漁ってたくらいには楽しみました。ただいかんせん伝えづらいおもしろさなので、印象に残ったことをつらつら書きます。
2001年宇宙の旅に通じる!
映画冒頭、ポケモンショックを案ずるほど点滅する丸いランプ。うっとーしや。しかしこいつ、本作の裏の主人公といえるコンピューター「α60(アルファ60)」なのです。こいつが始終出てきては、喋ります。ずっとゲップしてるような、凄まじく不快な低音ボイスで喋ります。ときにものすごく長く喋ります。
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感情や思想を排除された人々
60年代っぽい綺麗なおねーちゃんたちが沢山出てきますが、みんなダミ声アルファ野郎によって感情のないお人形さんにされています。揃いも揃って、こっちからなんも言ってないのに「元気です。ありがとう。どうぞ」って言ってくるのめちゃくちゃ気色悪いです。これはつまるところ「How are you?」「I'm fine, thank you. and you?」的な挨拶のやり取りを簡略化(というかやり取りしてない)したもの、ということらしいですよ。この台詞、気色悪さがたいへん気に入りまして、これだけで「名作だわ」とガッツポーズしました。
ほかに気色悪いシーンとして印象的なのは死刑執行ショー。この都市では「妻が死んで涙を流した」だけで死刑にされてしまうのです。仕方がないのです、感情を抱いてはいけないのですから。さて、見世物にされている死刑執行場、なぜかプールです。罪人はジャンプ台の先端に立って辞世の句を叫ばされ、言い終わるやズダダダダと撃たれてプールへ落下。待ってましたとばかりに、きれいに並んでスタンバイしてた数名のシンクロナイズドスイマーたちが入水し、死体を回収してから水中で技を決め、場内拍手喝采。うわあ、気色悪いよう。もうひとつの執行パターン「電気椅子」もなかなかゾッとする(むしろこれのためだけにあのセット作ったの…??っていう)ので本編でお確かめください。
アンナ・カリーナさん可愛い
ヒロインのナターシャを演じるアンナ・カリーナさん。めちゃくちゃ、可愛いです。「パリの恋人(1957)」のヘプバーンと同じくらい、衝撃的可愛さです。なんでもゴダール監督の奥さんだったらしいですが。いくらお話がわけわかんなくても、これだけ可愛いヒロインが出ていたら見ていられます。愛が思い出せない娘だけど大丈夫。とにかく可愛いから、見て!
影響を与えた作品
これはあとから調べて知ったことですが、本作と「勝手にしやがれ(同じくゴダール監督)」2作セットで、攻殻機動隊SAC「#3 ささやかな反乱」の元ネタなのだそう。劇中にもそのまま「アルファヴィル」の作品タイトルが。初めてSAC観たの10年以上は前ですから、そんなに前から接点があったことになります。あの小難しい映画、ゴダールだったのかーそうかーなるほどー。
押井監督のほうの攻殻も本作の影響を受けているそうなので、まあなんか、一連の攻殻シリーズに抱く「よくわかんないけど難しい感じ嫌いじゃない」っていう感情はゴダール作品に抱くそれと同じなんだなあとなんとなく納得です。ゴダール作品って言ってもこれしかまだ観てないですけど。しかも前述の通り分かりやすいほうらしいですけど。他の作品も観るかは未定ですけど。嫌いじゃないことは確かです。
あとこの映画自体も007シリーズ(の原作?)をオマージュしたようなところがあったりするようで、そのへんの相関図ってのはじつにおもしろいですねい。村上春樹の作品でがっつり引用されたりもしてるらしいですよ。
ということで、はい。もう何を書いてるのかわかんなくなってきましたので終わりにします。なぜって、考えることは禁じられているのです。それに「なぜ」ではなく「だから」と言うべきです。元気です。ありがとう。どうぞ。
(2018年48本目)