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主に映画のあらすじと(まとまりのない)感想文

15時17分、パリ行き(2018)

映画『15時17分、パリ行き』ブルーレイ&DVDリリース

タイトルからしてそそる。とても気になっていた作品です。クリント・イーストウッド監督、俳優時代の作品も含めてまったく未見だったので、恥ずかしながら今回が初のイーストウッド作品でした。「バック・トゥ・ザ・フューチャー(パート3かな?)」に登場する名前として子供の頃から認識はしていたため、念願のご対面(ただしクレジットの字面でのみ)という感じで感慨深いです。

さて、満員御礼の新宿ピカデリー、ちょっと狙った15時の回で鑑賞した今作。すごく好きです。

2015年に発生した列車内テロ事件を題材にした作品なのですが、まず何がすごいって、主役のみならずほぼ全ての登場人物を「本人(事件に巻き込まれた一般人たち)が演じている」ということですよね。演じているというより「再現している」ということになるんでしょうか。この事件は勇敢な民間人の行動によりほぼほぼ未遂で済んでいるようですが、1人だけ撃たれてしまった乗客がいます。その人ですら、本人が再現しているというのだから「ハンパねえ」です。ていうかトラウマとか、大丈夫なのか、それ。大丈夫だから実現してるのだろうけど…。イーストウッド氏も、ご本人な皆様も、ハンパねえ…。

ちょっと面白いことがあって、わたし先に事件のwikiを読んでたんですね。んで、事件の「概要」を読みながら「映画のあらすじ」を読んでるように錯覚してしまいまして。まあ実話なんだからこれがイコールあらすじなんだよな〜なんて思いつつ、続けて映画の方のwikiを見たらですね、「あらすじ」の項目に何も書いてなくて、ただ事件のwikiへリンク貼られてました(笑) というわけであらすじはこちらから。

タリス銃乱射事件 - Wikipedia

最後のほうに貼られてる写真も当然ご本人たちなので、何が何だかわからなくなること必至です。ちなみに、実話ベースの映画でよくあるパターンとして、ラストに実際の写真や映像などが出てくるやつ、ありますよね。今作でもそのパターンは使われています、が、なんせ同じ人が出てくるので、「ほんとに本人だ?!」という謎の感動があります(なんなら逆に、実際の映像なのか疑わしくなってしまうほど)。


ここまで書くと、テロを描いた作品っぽく思えるんですが、どっこい、本編中の9割は青春群像劇です。「スパニッシュ・アパートメント」3部作のような、若者たちのプライベートを描いた映像が延々続きます。

主人公は男子3人。黒人ひとりと白人ふたり。幼少期の出会いがきっかけでかけがえのない仲間になった彼ら。大人になってそれぞれの道を歩みながらもその関係は続き、あるとき3人でヨーロッパ旅行を計画。その道中に事件は発生します。しかしいかんせん、そこまでが長いのです(笑) 特に旅行中のシーンでは黒人のアンソニーが「自撮り棒大好きなフォトジェニック野郎」とかいうキャラ設定だもんで、あまりにもユルい。なんなら可愛い。とてもこのあとテロに立ち向かうとは思えません。

そう、つまり、「無差別テロの被害者側を描いた作品だからこそ」9割を占める「日常パート」には伏線もないわけです(あるわけがない、というほうが正しい)。このくだりに耐えられるかどうかで、作品の評価は大きく二分するのだと思います。Twitterで感想を検索してみると、きれいに二分している印象を受けます。

個人的には前述の「スパニッシュ〜」シリーズのような作品が大好きなので想定外ながら超おいしくいただいた感じになるのですけど(このシリーズ、今作の「9割」を楽しめた人にはおすすめです。10倍はゲスですが)、確かにテロを扱った作品として見ると物足りない、拍子抜け感は否めません。クライム映画的なものを期待して観た人にとってはなおのこと「期待はずれ」という「否」な感想が出てくるのも当然だと思います。「イーストウッド×テロ」というコピーを見た覚えがありますが、それも騙しコピーだなあと。どちらかというと主人公たちの歩みを描いたヒューマンドラマです。


とまあそんな感じで。期待の方向性によって大いに評価は分かれるところとなりそうな、しかしわたしは非常に好きな映画でした。あと、旅がしたくなります(途中で出会う女性たちがみんな可愛い。ヴェネチアの彼女が特に可愛い)。

(2018年41本目 劇場鑑賞)