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主に映画の感想文を書いています

アメリカン・グラフィティ(1973)

この作品を観る動機はいろいろあって、大きなものとしては吹奏楽ポップスの大定番「アメリカン・グラフィティ」シリーズの存在、それから最近では「キングスマン:ゴールデン・サークル」でジュリアン・ムーア演じる“ポピー”のアジトが「『アメリカン・グラフィティ』のような」と劇中で説明されていたことなど、など。

なんにせよ、ようやく観ました有名タイトル。1962年のアメリカ、ハイスクール卒業直後の宙ぶらりんな若者たちがそれぞれに交錯しながら過ごす「一晩」を描いた青春群像もの。とにかく印象的なのが、狭い世界でこれといってアテもなさそうに走り回る若者たちのアメ車、またアメ車。ひたすらアメ車を堪能する映画という感じです(笑) 車でそこらを走り回る(流す、というらしい)こと自体がレジャーな、そんな文化だったのでしょうね。顔見知りしか走ってないような街で、並走しては声を掛け合い、ときには乗り換え、じゃれ合うようにチキンレース。走り飽きたらダイナーへ(このダイナーが、そのまんまポピー@キングスマンのミンチなお店ですね)。

近い時代を描いた作品に「理由なき反抗(1955)」がありますが、あっちは悲壮感に虚無感といった展開なのに対し、この「アメリカン・グラフィティ」はこれといって感情の揺さぶられるような事件もなく、ちょっとした夜遊び程度で夜明けを迎えます。その感じが、なんだかすごく好きです。夜遊びと車は相性がいいものなあ。

この映画、掘れば掘るほど「そうなのか案件」が多すぎてWikipediaのクリックが止まりません。ルーツを感じるもの、その先の作品のルーツになったであろうもの、どっち向きの要素もいろいろあって楽しいです。先日「ロバータ(1935)」で観たばかりの「煙が目にしみる」で踊ってたり、のちに「バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)」を象徴する曲となる「ジョニー・B・グッド」がリアルタイムに流れてたり、1985年が舞台の「シング・ストリート(2016)」では「BTTFのように」と指示されていたダンスパーティーのシーンがどちらかというとこの「アメリカン・グラフィティ」だったり。いくらでも、ぐるぐる繋がっていきます。オールディーズは全く疎いながら、ダニー&ザ・ジュニアーズの「AT THE HOP」って曲は桑田佳祐ラジオDJ役で吹き替え担当してたようですね)の「若い広場」だなあとかも。

役者もみんな魅力的。Tシャツの袖でタバコ巻いてる優しい漢ポール・ル・マット、彼がなぜか付きまとわれる弱冠12歳の女の子マッケンジー・フィリップス(可愛い!)、ちょい役のブレイク前ハリソン・フォード、冴えなさがむしろ可愛いヒョロ男子ロニー・ハワード(今度「ハン・ソロ」を監督するそうな)、彼と一晩付き合ってくれるマリリン系女子キャンディ・クラーク、昭和の日本女性を思わせる黒髪少女のシンディ・ウィリアムズ(今作、わたしの推し。このあと「スター・ウォーズ」のレイア役オーディションを受けてキャリー・フィッシャーに敗れたらしいです。かなしい)、一応物語の中心に置かれているっぽいリチャード・ドレイファス(大学進学に悩むキャラが、「未知との遭遇」では宇宙に行っちゃう)は…いまいちピンとこなかったけど(笑)、よくも2時間弱でここまで魅力的なキャラを描けるものです。

とまあ、この通りいくらでも書けるので、わたしのような映画掘りはじめ勢の人には大変おすすめできます。ここまで一度も書きませんでしたが、ジョージ・ルーカス監督の作品です(最初に書けや)。

(2018年22本目)