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主に映画の感想文を書いています

ポンヌフの恋人(1991)

TSUTAYA DISCASって一度につき2枚セットで送られてくるんですけども、今回は特に何も意図せず「浮雲(1955)」と「ポンヌフの恋人」が一緒に届きました。50年代の日本映画と90年代のフランス映画です、まさか繋がりがあるなんて当然思いません。そう、まさかの繋がりがあったのですよ。なんでも、監督のレオス・カラックス成瀬巳喜男監督の大ファンで、「浮雲」も超フェイバリットムービーらしいのです。ミラクルですなあ。 主演女優はジュリエット・ビノシュ。個人的にはつい最近、河瀬直美監督の「Vision(2018)」で名前を知ったばかりという程度でしたが、当ブログで最近なにかとホットな作品「ナラタージュ(2017)」に出てきた映画「存在の耐えられない軽さ(1988)」は彼女の主演作品でした。つながるつながる…。

ざっくり

ポンヌフ橋で出会ったホームレスの男女ふたりを描いた恋物語

お好きな方はすみません

びっくりするくらい肌に合わない映画でした。どれだけ肌に合わなかったかというと、2時間の映画なのに2日かけて観終わったっていうレベル。初日は睡魔でリタイアです。それもアレックスが「起きて! 眠りたい!」とハンスを起こすシーンで耐えられなくなって寝ました(笑)

根本的に、ホームレスの恋物語っていうのがまったく感情移入できませんで、わたしという人間の歪んだところが出てしまっているなあという気持ちですが、まあそういうわけでして。あと、水回りの汚い映画が苦手なので(トレインスポッティングとかああいう質感の)、そういう面でもしんどいところがございました。メモに「汚い…」って書いてあった。率直な感想。

ただそのなかでも映画表現として印象的なシーンはいくつかあって、どれも名シーンと言われている箇所だと思いますが、フランス革命200年祭の花火が人を殺す勢いでスパークしてるシーンとか、雪のシーンとか、目の治ったミシェルが言う「夢で見た人に翌朝すぐ電話できるなら人生もっと単純ね」みたいな台詞とか、最後の最後「まどろめ、パリ!」んとこのタイタニックごっこ…と見せかけてじつは「タイタニック(1997)」の元ネタになったらしいシーンとか。でも、トータルでいうとわたし的には眠かったです。

地味な映画に似つかわしくないスケールの裏話

観終わってから知ったことですごくびっくりしたんですが、舞台になるポンヌフ橋とその周りの景観はパリでのロケではなく、どこかの小さい村に作られたオープンセット(っていうか土木工事で作った本物の橋と、巨大なハリボテ)で撮影されたのだそうな。元々は本物のポンヌフ橋を使える予定だったのだけど、いろいろあって撮影期間が延びていくうちに使えなくなって、しゃーない作っちまえと気合いで作ったんですって…。

このへんのことはDVDの特典映像に「メイキング・オブ『ポンヌフの恋人』/呪われた映画をめぐる証言」としてだいぶ詳細なメイキング映像が収録されてます。最近も日本で、町おこし的に撮影していた映画が日の目を見ず…みたいな問題が取り上げられてた気がしますが、これもそんなような話。「呪われた映画」と言われても仕方ないくらいの紆余曲折で、よくまあ完成にこぎつけたものです。

それにしてもですね、この巨大セットが想像以上にすごいんです。メイキングでは空撮で全貌が見えるんですけど、ぶっちゃけあの映画の質感だったらここまでしっかりしたセットは要らなかったんじゃないの?と思ってしまうほどの作り込み(本領を発揮するのは雪のシーンでしょうか。あの雪も全部作り物、とのこと)。ハリボテ部分に関してもただのハリボテと侮るなかれ、常軌を逸したスケールのハリボテです。

検索すると驚愕の画像がいっぱい出てくるので、ご興味ありましたら是非どうぞ。エピソード含めて、ダム建設とかの話が好きだったら絶対萌え散らかすやつです。

というわけで、映画そのものはハマらなかったのに製作秘話のところでずぶずぶハマってしまった特殊ケースでした。

(2018年215本目)