ユナイテッド93(2006)
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概要
2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件でハイジャックされた機体のうち、建造物や市街地に突っ込むことなく乗客乗員以外の被害を出さずに墜落したユナイテッド航空93便を題材としたノンフィクション映画。
雑感
観終わった後しばらく息が上がっていました。さすがにちょっと気分も悪くなりました。
ノンフィクションの航空機事故もので、たとえば「ハドソン川の奇跡(2016)」は全員助かります。同じくノンフィクションのテロもので、「15時17分、パリ行き(2018)」も確か全員助かったはず。それらの作品と同じようなテイストの映像を見せられ続けて、最終的に乗客乗員全員死亡という結末はなかなかつらいです。
2時間に満たない映画ですが、前半1時間ほどは管制室などの各司令室の様子がひたすらザッピングされていきます。本作の題材はあの有名な2機(=ワールドトレードセンターに突っ込んだ2機)ではないので、「あの瞬間」はあまりにもあっけなく起こります。「レーダーから消えた」、それだけです。最新情報を追っていたはずの管制官たちですら、衝撃的ニュースはテレビで知ります。
「レーダーから消えた」ことにより「つまりそうなった」と察せてしまう演出はありきたりながら非常にショッキングで、印象的でした。フィクションと比べるのもアレですけど、「シン・ゴジラ(2016)」を思い出しました。司令塔の人たちがみんな地下や会議室にいて、必死に対応している対象物を目視するのはだいぶ先のことである、っていうあの感じ。そういえば大杉漣さん亡くなったんだなあ。
ユナイテッド航空93便の機内でテロリストたちによるミッションが開始されるのは、映画も後半に差し掛かってから。本作は犯行前のテロリストたちを描くところから始まっており、信念に基づいて「勇気を持って」実行しようとする彼らの姿がまた印象的です。彼らが感情移入に値する人間でないことは確かですが、自爆テロ系の犯人、特に宗教が絡んでいる犯行というのは、フォーカスを合わせれば少なからずこういった人物像が浮かび上がってくるのかもなと思わされました。
乗客が比較的少なめだったこと、切れ者の乗客が指揮をとったことにより団結が強まり、どうせ死ぬならとテロリストたちへの反撃を企て実行する乗客乗員たち。落ちて全員死んだ飛行機で果たしてそんなことが、と思わなくもないですが、劇中でも描かれているように機内電話や携帯電話(おそらく普通に使えるくらい高度が下がっていた…?)で多くの乗客が地上の家族や友人と連絡を取っていた=事件当時の機内と地上がリアルタイムに沢山繋がっていた、というところから、本作で描かれていることはそれなりに忠実なのでしょう。
視覚効果は最低限にとどめられた本作。墜落していく機体が客観的に映されることもなく、窓からうっすら見える山肌がだんだん鮮明になってきて、地表が近付き、ブラックアウトしてエンドクレジットへと流れます。本来ならワシントンD.C.を目指していたとされるユナイテッド93便。テロリストたちの目的は達せなかったものの誰ひとり助かることもなかったこの実話は、多少しんどい思いをしてでも知るべき、と思いました。
(2018年201本目)
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