卒業(1967)
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2018/06/29
- メディア: Blu-ray
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あらすじ
誰もが将来有望と信じて疑わない優等生ベンジャミン。大学卒業を機に実家に帰ってくるが、彼の心は将来への不安で満ちていた。そんなある日、自宅でのパーティーに来ていたロビンソン夫人から車で家まで送ってほしいと頼まれ、送り届けるベンジャミン。帰ろうとすると夫人は彼を引き止め、その様は誘惑しているかのように見えた。あわや、というところで主人が帰宅。冷や汗を拭うベンジャミンに対し、知る由もなく「若いんだから羽目を外せよ!」とアドバイスを与える。
後日、夫人のことが頭から離れなくなってしまったベンジャミンは夫人とホテルで待ち合わせ、誘われるがままに一夜を共にする。その夜以降ふたりの情事は数ヶ月にわたって続き、実家での彼は怠惰に過ごすのみだった。心配した両親に無理やりセッティングされるかたちで彼はよりによってロビンソン夫妻の娘エレインとデートをすることになる。夫人の手前、気のないそぶりを見せるベンジャミンだったが……。
あらすじが書きやすい!(笑) ここまでにしておきます。
雑感
いや〜、面白かった! おもしろかったというより、単純に面白かった! 将来有望と期待され続けてきた若者が大学卒業を境にどんどん壊れていく話なのだけど、独特の軽さがあるんですよね。編集も粋だし、とにかく2時間弱まったく飽きることなく観続けられる感じ。わりと眠い時間帯に観てたのでこれは確かです。
ざっくり「夫人編」の不倫パートと「娘編」の恋愛パートに分かれていて、まずは夫人編。アン・バンクロフトさん演じるミセス・ロビンソン(サイモン&ガーファンクルによる同名の挿入歌を聴くために鑑賞しました)がですね、見事に魅惑的な人妻像として描かれております。素晴らしいキャスティングです。「昼下がりの情事」って聞いて想像するのはこっちだよね〜っていうようなフェロモン祭りを見せてくださいます。
そして一応本作の主人公ベンジャミン。彼は「遊び慣れしてない若者」ポジションなわけですが、それがまたお見事。初ベッドインに至るまでのキョドり芸の数々は思わず声出して笑っちゃう。演じているのはこれが映画初主演のダスティン・ホフマンで、Wikipediaによれば当初ロバート・レッドフォードにオファーをかけたものの「童貞顔してないでしょ(意訳)」と断られたそうな。ちなみにこの二人は「大統領の陰謀(1976)」コンビです。
後半の娘編は、大半が未練タラタラのおひとりさまロードムービー。「君のお母さんと寝ちゃったけど、でも信じて、僕は君のこと愛してるから」とひたすら彼女を追い回すベンジャミン。狂気。陸上選手の設定を活かした「バスより速い元カレ」とか、完全にギャグですよ。ちょっと心の距離が縮まったら今度は「明日結婚する?」って詰め寄りまくるし。ギャグですよ。
ほんでラストシーン。これはわりと感動(物語にではなく)したんですけど、花嫁強奪展開の元祖らしいですね。今でこそフィクションでは見慣れた光景である「教会からウェディングドレス姿の花嫁を奪取してそのへんの道を全力で走ってバスに乗り込んで大笑い」的なやつ。これまでいろんなドラマなどで見てきたこの光景がみんな本作から派生したものなのだとしたら、すごい!&すごいものを見た!
編集が粋、とさっき書きましたが、たとえば夫人の裸体が「ファイト・クラブ(1999)」ばりのサブリミナルで何度も挿入されてくるところとか、潜水ゴーグル越しの狭い視界とか(あれはどんな意味なのかしら)、情事シーンと実家シーンが次々とシームレスに繋がれていくスリリングな編集とか、不倫をバラされた夫人が「グッバイ、ベンジャミン」の言葉をきっかけに思いっきりズームアウトされていくところとか、エンストに合わせて「ミセス・ロビンソン」のアコギが徐々にスローダウンしていくアテレコ感とか、撮影も編集もすごく尖っていておもしろかったです。
あとはなんだろう、父がプレゼントしてくれた車のおかげで夫人と接近することになり、その亭主がかけてくれた「羽目を外せよ!」という言葉のおかげでこんなことになり、っていう(笑) うん、とにかく面白かった。シリアスなドラマ映画かなと思って観てない方には「いや全然そんなんじゃないですよ」とおすすめしたい一本です。お休みの日の昼下がりにおひとりでどうぞ。
(2018年182本目)