353log

主に映画の感想文を書いています

ジャズ・シンガー(1927)

世界初の長編トーキー映画と言われる作品。映画がサイレントからトーキーへ移行していく時代(まさに1927年)を描いた「雨に唄えば(1952)」に登場し、劇中ではこの「ジャズ・シンガー」の公開とヒットが物語を大きく動かすきっかけとなります。だいぶ遅ればせながら鑑賞しました。1927年作品とは思えないBlu-rayの高画質に驚き。

あらすじ

代々続く司祭長の家系に生まれ育ったユダヤ人の少年ジェイキーは、讃美歌よりもジャズ・ソングを好んでいたことから父に勘当される。時は経ち、彼はジャズ・シンガーとして成功への階段をのぼっていた。しかし大事なショウの初日、父の危篤を知らされた彼は動揺する。ちょうどその日がユダヤ教の「贖罪の日」に当たることも関係していた。司祭長である父の代わりに賛美歌の「先唱者」を務めてほしいと愛する母から懇願されたジェイキーは、苦悩の末に決断をする。

雑感

まず、わりとサイレントだった!という予想外(笑) てっきりオールトーキーと思い込んでいたんですけど、主に歌唱シーン以外はほとんどサイレント形式(無声の映像に続いて字幕のコマが挿入されるスタイル)なんですね。意図的な狙いがあったのか、単に技術や予算の問題だったのか、そこまでは調べてなくて分かりませんが、なんだサイレントかと思っていたら不意打ちで歌い出すってのは当時かなり衝撃的だったんじゃないでしょうか。

ストーリーもまた意外なことに、のちに量産されるいかにもなバックステージものとはだいぶ雰囲気が違う、ウェットでシリアスなものでした。ヒロインになりそうな女性が出てくるけれどジェイキーが一番愛してるのはお母さんで〜すっていう超マザコン物語でもあり。仕事を取るか家族(家の事情)を取るか、で本作のような選択をするバックステージものって結構珍しい気がします。

実質の初トーキーシーンでジェイキーが言う「お楽しみはこれからだ」という台詞がいわゆる名台詞なんだそうですが、あまりによくある台詞だもんで「これがオリジナルなの?!」とびっくり。まあ実際、映画史上初のミュージカルナンバー的なものを見せた直後に言う台詞なわけですから、だいぶ粋な台詞ということになるのかもしれません。

名台詞的なことでいえば「雨に唄えば」に出てくる台詞「ショウ・マスト・ゴー・オン!」がこちらにも登場。曰く「ショウ・マスト・ゴー・オン」とは「芸能人なりの信仰」なのだそう。さて、その信仰を貫くのかどうか、みたいなお話。

トーキー映画第一号であり、そのくせサイレント映画でもあり、「雨に唄えば」をよりリアルに感じられる作品でもあり、いろいろお得な作品でした。ていうかひとつ前に観た「オーシャンズ13(2007)」からいきなり80年も遡ってしまったのか…(笑) お楽しみの息が長い!

(2018年178本目)