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主に映画の感想文を書いています

矢野フェス2018 / 日比谷野外大音楽堂(2018/06/16)

Cymbals、音楽プロデューサー矢野博康氏の主催するオムニバスなライブイベント「矢野フェス2018」へ行ってきました。これまでは屋内での開催でしたが、4年ぶりとなる今回は名高き「野音」に場所を移しての開催。てっきり雨だと諦めかけていた空模様も、数粒落ちてきた程度の99%晴れ。すばらしい。

初参戦となる前回も今回も、本命は坂本真綾。なのですが、矢野フェスの魅力は音楽的サジェスト力の強さ。ノーマークのアーティストにビビッとくる率が高く、4年前にNegiccoを見初めた場所でもあります。今回もきっと本命以外でビビッとなれるであろうと期待しての参戦です。

土岐麻子さんに出会った

早速の結果発表。今回のベストオブ電流は土岐麻子さん。矢野さんと同じく元Cymbalsということで初回から出演されているも、前回は2days開催によりご縁がなく、今回が初めましてでした。正直そもそも矢野さんの何たるかもさして分かっていない、もちろんCymbalsは聴いていない、トサアキコさんかと思ってた、そんなレベルなので一切バイアスのない初対面です。

たった3曲という短い時間にもかかわらず、1曲目「Gift 〜あなたはマドンナ〜」から骨抜きに。CMソングとして耳馴染みのある曲だったというのも大きいと思いますが、その堂々とした佇まい、派手なことはしていないのに一瞬で自分のステージにしてしまう引き込み力、そしてまあ何より声が素敵や!よくこれまでノーマークで来れたな!とクラクラした次第。

前回の矢野フェスでも帰ってから早々にNegiccoの曲をiTMSで購入したものですが、今回も秒で購入しました。シュペリエルな方と出会えてうれしい。

さかいゆうに嫉妬した

オープニングで登場せず、まさか出演キャンセル…?と張り詰めた空気が一瞬流れたものの、じつのところは「友人の結婚式出席のためちょっと遅れます」というユルさだったさかいゆうさん。坂本真綾に楽曲提供をしていたことでお名前は存じ上げていたし、いい曲を書かれる方だという認識もありました。が、こんな才能の塊みたいな人だったか!すげーな!

土岐さんのステージ中、コラボレーションのかたちで初登場。結婚式からの遅刻参加だというのに、まだ自分のステージでもないのに、なんならまだ歌ってすらいないのに、一瞬で客の心を掴んでいく、言いたかないけど人間力とかいうやつ、っすよ、ええ。飲み会に途中から来て一瞬でまわりと同じテンションに持ってけるタイプの人ですよ、ええ。羨ましくて苦手〜〜〜!!!

でまあ、サウンドチェックがてらポロポロとピアノ弾きながら土岐さんと軽く合わせたりしてるんですけど、その時点で商品化できるクオリティがあるわけですよ。サウンドチェックすら売れる、っていう、お前もシュペリエルか!っていう。だったら当然、本気で歌い始めたら美術館行きのクオリティになるわけじゃないですか。とにかく声質がいい。声量がある。トータルで超うまい。加えてピアノもめっちゃ上手い。リズム感、ダイナミクス、完全にバンド要らず。弾き語りで?このクオリティ?えらい人間がいたもんだ!

というわけで、ムカつくので多分ライブ行ったりはしないと思いますけど、心底すばらしいシンガーソングライターでありプレイヤーでありセルフプロデュースの行き届いたパフォーマーでした。腹立つ!

引き込み力という技術が顕著に出る場

EPOさんも素晴らしかったです。土岐さんなどと同じく完全ノーマークだった方で、そもそも存じ上げなかったくらいの方ですが、大ベテランさんなのですね。「う、ふ、ふ、ふ、」とかこの方の曲だったんだ…っていう。EPOさんがまた、土岐さんとさかいゆうさんを足して割らないくらいの圧倒的なステージング力を見せてくれちゃう方で。このへんは純粋に経験なのか、生まれ持ってのものなのか、フェス的なイベントでこういったアーティストに出会うと毎度すごいなあと思います。

それは、そこまでおとなしく着席ムードだったのを一気に総立ちにさせたNONA REEVESにも言えることだし、驚異的な頭の回転スピードでMC役を超そつなくこなしつつもその喋りだけで客席の心を鷲掴みにしていた南波志帆さんもそうだし、恒例の大トリを恒例の曲たちで楽しく楽しく盛り上げてくれたムードメイカ堂島孝平さんもだし、みなさんすごいっすよ。つよい。リスペクト。

我らが坂本真綾さんは、きわめて安定した高品質な歌唱だったと思いますが、引き込み力という意味では上で挙げたような方々には及ばないなあという印象でした。すでに魅力を十二分に知ったうえでの冷静なファン目線とかいう嫌味なやつなので、初見のお客さんは引き込まれてくださってるかもしれないですけども。もっと1曲目から脳天撃ち抜いてくるようなパフォーマンスがいつか見れたらいいなあと。ただ、そういうタイプのパフォーマーに必ずしもなる必要はないのかなという気持ちもあります。むずかしいところ。

堀込泰行さんは本当に自然体という感じで、まさかのトークコーナーMCもめちゃくちゃ(たぶん南波志帆さんのおかげで笑)面白かったです。さかいゆうさんとかもそうだったけれど、自然体な姿がみんなから愛されてる人って嫉妬しちゃいますよね。堀込兄の気持ちもわかる気がするなあと思ってしまった瞬間でもありました。さておき、4年前に初めて拝見したときはキリンジも聴いたことがなかったので、今回の「エイリアンズ」うれしかったです。

前回オープニングアクトのくせに圧倒的な印象を残していったNegiccoさんたちは、雰囲気こそ変わらないものの自信に溢れたオーラが出るようになってました。4年前は会場内でもマイノリティだったネギライトが今回は野音の前方ブロックを埋め尽くしていて、本人たちのことよりもむしろ客席の光景に胸が熱くなりました。ネギさんたち、よい4年間を過ごせたようでよかった。これからも遠目に応援してます。今回だけじゃよく分からなかった寺嶋由芙さんも、いいかたちで再会できたらいいですね。

最後は「土曜日の夜」にふさわしく「DOWN TOWN」を全員で。シュガーベイブと坂本さんのしか知りませんでしたが、EPOさんのバージョンもあったのですね。多幸感あふれるグランドフィナーレでした。終演後、日比谷の街に繰り出しました。土曜日最高。

というわけで、まとめると「土岐麻子さんに射抜かれる」「さかいゆうに嫉妬する」「引き込み力の強いアーティストはつよい」「坂本さんまだまだいける」「土曜日最高」といったところになります。前回と同じく本命以外が印象に残ってくれたので狙いどおり。やはり矢野フェスはおもしろい。次回も楽しみにしています。

ナタリーありがとう

充実のライブレポと写真が上がっておりました。うれしい。