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主に映画の感想文を書いています

アメリカン・ティーン(2008)

アメリカン・ティーン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

アメリカン・ティーン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

ライムスター宇多丸師匠が本のなかでプッシュしていたのをきっかけに鑑賞。本というか、もとはラジオの同名コーナーで取り上げられていたやつですね。オリジナルの音声はYouTubeで聴けます。
TAMAFLE BOOK 『ザ・シネマハスラー』

TAMAFLE BOOK 『ザ・シネマハスラー』


概要

舞台はアメリカの高校。大学進学という分かりやすい人生の岐路に立たされた高校3年生の少年少女たちを丸1年かけて実録した、モキュメンタリー風ノンフィクション・ドキュメンタリー。

モキュメンタリーだと思って観てた

これ、なかなかすごいですね。「ブレックファスト・クラブ(1985)」で描かれているようなアメリカのスクールカーストを基にした、っていうかまあ「ブレックファスト・クラブ」みたいな映画なんですけども。すごいのは実録のドキュメンタリーだってところです。最後に「その後の彼ら」が出てきて、「マジか」ってなりました。半信半疑で調べて、本当に実録らしいな…っていう、じつは未だ少々疑ってますが(笑)

でも、まあ本当なんだろうなと思えるシーンがひとつあって。主要キャラの子が大学の合格通知を受け取るシーンがあるのですが、封筒を開けて結果が目に入ってきた瞬間に表情がぐしゃっと歪んで号泣しちゃうんですよ。そこがあまりにもリアルで、まだフィクションだと思い込んでたときの鑑賞メモに「受かったシーンすごい。演技?」って書いてたくらいです。そう、演技じゃなかったわけです。リアルなわけだ! 他に、似た味わいの映画としては「アメリカン・グラフィティ(1973)」とか。同じく「その後の彼ら」が出てくる系ですけど、こちらはフィクションなんですよね。いろんな映画の作り方があるなあ。「アメリカン・グラフィティ」が旅立ち前の一夜を切り取った作品だったように、「アメリカン・ティーン」は巣立ち前の一年を切り取った作品になってます。新学期の初日から卒業式まで。卒業式がすごい泣けた。今思えば、本物だったからでしょう。あっちでも卒業式には「威風堂々」なのね。

地味だけど胸にくる

ドキュメンタリーだから当然ですけど、そこまで劇的な展開は起こらないです。でも、「自分の人生」視点では劇的なことばかり。恋の始まりと終わり、進路の問題、その他諸々エトセトラ。

狭いコミュニティのなかで取っ替え引っ替え入り乱れる男女関係なんかは身に覚えがありすぎます。失恋のつらさも鮮明に呼び起こされます。失恋がきっかけで不登校になってしまいなかなか学校に戻れない少女にもすごく共感できます。「将来、今よりもさらに負け犬になったら?」と憂う少年、わたしも今それめっちゃ思ってる〜〜〜〜〜!!!ってなって死にました。

「ブレックファスト・クラブ」さながらカーストの違う5人の男女を中心とした記録になっているので、いろんな立場・状況の人に漏れなくグサグサ刺さることでしょう。多分そういう映画好きだわ、と自覚のある方はぜひご覧ください。

(2018年123本目)