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主に映画の感想文を書いています

2020年の鑑賞記録

映画「アルプススタンドのはしの方(2020)」雑感|じつは悔しいのかもしれない自分語りの巻

城定秀夫監督の映画『アルプススタンドのはしの方』を観ました。高校演劇の人気演目を原作とした作品で、甲子園を舞台としながらもグラウンドや選手の姿は一切登場せず、「アルプススタンドのはしの方」だけが映り続ける映画です。 夏の甲子園一回戦、アルプ…

塚本晋也監督版「野火(2015)」雑感|非常にハイクオリティな戦争疑似体験映画

大岡昇平さんの同名小説を原作とした映画『野火』を観ました(1959年の市川崑監督版ではなく2015年の塚本晋也監督版)。 この映画、タイトルは知っていましたがあまりいいイメージを持っていなかったというか、趣味の悪い映画かなと勝手に遠ざけていました。…

ドキュメンタリー「大林宣彦&恭子の成城物語(2019)」ほか雑感|大林映画は“夫婦”の作品

U-NEXTで『ノンフィクションW 大林宣彦&恭子の成城物語 [完全版] ~夫婦で歩んだ60年の映画作り~』を観ました。元々はWOWOWで60分番組として放送されたもので、現在U-NEXTほかで配信されているこちら82分尺の「完全版」は昨年の東京国際映画祭にて公開され…

2020年7月に観た映画を振り返る

7月の鑑賞映画を振り返ります。6月分はこちら。 新作 レイニーデイ・イン・ニューヨーク はちどり 透明人間 海辺の映画館─キネマの玉手箱 旧作 タクシー運転手 約束は海を越えて(2017) 1987、ある闘いの真実(2017) 瞳の中の訪問者(1977) 北京的西瓜(1…

映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に(2019)」雑感|広島原爆投下から75年の日に

広島原爆投下から75年の日、片渕須直監督によるアニメーション映画作品『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を観ました。2016年に大ヒットを記録した『この世界の片隅に』に約40分の新たなシーンを追加した、アナザーバージョンの作品です。8月5日より…

大林宣彦監督作品「海辺の映画館─キネマの玉手箱」の好きなところをひたすら書きます

大林宣彦監督による永遠の最新作『海辺の映画館─キネマの玉手箱』。公開日の翌日には「とりあえず書き留めておく感想未満の何か」というかたちで感想未満の何かを書きましたが、このたび2回目の鑑賞もしてきましたので今度こそ感想を書きたいと思います。 3…

大林宣彦監督最新作「海辺の映画館─キネマの玉手箱(2020)」待ちに待った公開日、とりあえず書き留めておく感想未満の何か。

2020年7月31日、大林宣彦監督の最新作『海辺の映画館─キネマの玉手箱』を観ました。ついにこの一文を書ける日が来て感無量です。大林監督は2020年4月10日に82歳で亡くなられましたが、奇しくもその日は本来であれば本作の公開日でした。というのも新型コロナ…

小津安二郎監督作品「秋刀魚の味(1962)」雑感|軍艦マーチと失われた青春

小津安二郎監督の遺作『秋刀魚の味』をNetflixで観ました。小津作品は恥ずかしながらつい最近『東京物語(1953)』を観ただけというビギナーですが、もう一本観たことで作家性が浮き彫りになった印象です。とりあえずやはりゴリッゴリの望遠圧縮と、計算し尽…

映画「潜水艦イ-57降伏せず(1959)」雑感|“和平の片棒をかつぐ”という戦時下の罪悪感

『ハンターキラー 潜航せよ』の直後に東宝の潜水艦映画を観るという、なかなかいい感じの繋ぎをしております。先日書いた記事同様、アトロクの「元特攻隊の脚本家・須崎勝弥」特集を聴いて&春日太一さんの新著「日本の戦争映画」を読んで、のセレクトです。…

映画「ハンターキラー 潜航せよ(2018)」雑感|あのシーン、早っ!

日本の戦争映画を続けざまに観ていたら潜水艦欲が高まってしまって、これを観るなら今じゃろということで観ました、ちょっと前の話題作『ハンターキラー 潜航せよ』。元原子力潜水艦艦長の方が書いたフィクション小説を原作としているそうです。 ハンターキ…

映画「太平洋の翼」「太平洋奇跡の作戦 キスカ」「連合艦隊」雑感|“アトロク”の「元特攻隊の脚本家・須崎勝弥」特集を聴いて

TBSラジオ「アフター6ジャンクション」にて、時代劇研究家の春日太一さんによる「元特攻隊の脚本家・須崎勝弥が描いた『日本の戦争映画』 特集」という企画が放送されていました(2020年7月22日20時台)。そのなかで春日さんが紹介していた3本の太平洋戦争映…

韓国映画「新感染 ファイナル・エクスプレス(2016)」雑感|南北分断にセウォル号、負の韓国近代史を下敷きにしたゾンビ映画

「マブリー」の愛称で大人気なマ・ドンソクの魅力にわたしもクラクラしたいな、ということで手始めに『新感染 ファイナル・エクスプレス』を観ました。このタイトルは当時のTSUTAYA店頭でやたらよく見た記憶があります。ゾンビものなんて全く興味がなくスル…

映画「野いちご(1957)」雑感|タイムスリップもある、ベルイマン的ロードムービー

朝に『第七の封印』を観て、昼下がりに『野いちご』を観る、という謎のベルイマン集中履修をしました。いや、ただ単にTSUTAYA DISCASで借りてたのを一気に観ただけなんですけども。というわけで、イングマール・ベルイマン監督の『野いちご』を鑑賞しました…

映画「第七の封印(1957)」雑感|意外とコメディタッチだったベルイマン作品

イングマール・ベルイマン監督の『第七の封印』を観ました。休日の朝から頑張りました。 ベルイマン作品は何本か観てきましたが、まだ苦手という印象が強くてですね。この『第七の封印』も、有名な「死神とチェス」のシーン(きっとクライマックスだろう)を…

映画「さくら隊散る(1988)」雑感|大林宣彦監督の新作「海辺の映画館」の予習を兼ねて

新藤兼人監督による1988年の映画『さくら隊散る』を観ました。 さくら隊=桜隊とは、太平洋戦争のさなかに国策演劇、つまりお国からの指示で慰問のため地方を巡っていた移動劇団のひとつでした。東京大空襲を経て広島市内へ「劇団疎開」していた桜隊でしたが…

大林宣彦監督作品「22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語(2007)」雑感

2007年公開の大林宣彦監督作品『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』をレンタルDVDで観ました。伊勢正三さん作詞作曲のフォークソング「22才の別れ」をモチーフとした作品になっており、こちらは未見ですが2002年公開の『なごり雪』に引き続いての「大分…

大林宣彦監督作品「風の歌が聴きたい(1998)」雑感|いちばん“普通にいい”大林映画かもしれない

1998年公開の大林宣彦監督作品「風の歌が聴きたい」をレンタルDVDで鑑賞しました。 主演は天宮良さん、中江有里さん。そのほか、入江若葉さんはじめ大林組お馴染みの面子が脇を固めます。ちょっとこれは、いまのところダントツで「普通にいい」大林映画でし…

大林宣彦監督作品「三毛猫ホームズの黄昏ホテル(1998)」雑感

赤川次郎さんの同名小説を原作とした大林宣彦監督の映画『三毛猫ホームズの黄昏ホテル』をレンタルDVDで鑑賞しました。 正確には「土曜ワイド劇場」で放送されたテレビドラマのディレクターズカット版で、劇場公開はされていないとか。よく見るとフィルモグ…

映画「透明人間(2020)」雑感

エリザベス・モス主演、『ソウ』シリーズのリー・ワネル監督作『透明人間』を劇場で観てきました。ちなみに洋画で2020年本国公開の作品を観たのは、なんと今年初です! 直接的なネタバレは避けていますが、鑑賞前に読むとある程度の楽しみを削ぐことにはなる…

大林宣彦監督作品「北京的西瓜(1989)」雑感

漢字が多い(笑) 1989年の大林作品『北京的西瓜』をレンタルDVDで鑑賞しました。監督曰く、読み方は『ぺきんてきすいか』『ぺきんのすいか』どちらでもいいんですよ、二つの読み方があるんですよ、とのこと。 あらすじ 舞台は1980年代、千葉の船橋。八百屋「…

ドイツ製Netflixドラマ「DARK/ダーク」シーズン3ネタバレ雑感|ありがとう!いいSFでした!

Netflixで配信されているドイツ製作のドラマシリーズ『DARK/ダーク』。いまどき珍しく、3シーズンでスマートに完結してくれました! 前シーズンのラストからは不穏な予感しかしなかったのですが、いやいや、予想外に大満足の最終シーズンだったと思います。…

大林宣彦監督作品「瞳の中の訪問者(1977)」雑感

配信されている大林作品は見尽くしてしまいましたが、宅配レンタルのTSUTAYA DISCASにてDVDの在庫が復活してきたので一気に何本か借りました。まずは、1977年公開の2作目『瞳の中の訪問者』から。これ観れると思ってなかったので嬉しい! 原作はなんと、手塚…

韓国映画「1987、ある闘いの真実(2017)」雑感

『タクシー運転手 約束は海を越えて(2017)』鑑賞からの流れで、同じく1980年代韓国の民主化運動を描いた映画『1987、ある闘いの真実』を観ました。 あらすじ 1987年1月14日、学生運動をしていた大学生パク・ジョンチョルが警察の拷問により死亡する。警察…

韓国映画「タクシー運転手 約束は海を越えて(2017)」雑感

ソン・ガンホ主演の韓国映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』を観ました(副題付いてたの知らなかった)。ここのところ韓国文学を何冊か続けて読んでいるためか、空前の韓国ブームがきているわたしです。文化に興味を持ち始めると、俄然エンタメ摂取が楽…

ウディ・アレン最新作「レイニーデイ・イン・ニューヨーク(2019)」雑感

ウディ・アレン監督の最新作『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』を観ました。先日の『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019)』に引き続き、映画館での新作映画が二作連続ティモシー・シャラメ、っていうね。シャラメ嫌いだったんじゃな…

韓国映画「はちどり(2018)」雑感&キム・ボラ監督リモート舞台挨拶のうろ覚えレポート

韓国映画『はちどり』を観ました。韓国では2019年に一般公開され、同年公開のポン・ジュノ監督作『パラサイト 半地下の家族』に次ぐ2019年の代表作として大ヒットしたのだそうです。キム・ボラ監督の長編デビュー作である本作は、世界中の映画祭で賞を獲り、…

「ウエストワールド」シーズン2・3を観て思ったこと|難しげの難しさと映画の強み

PrimeVideoで配信中のHBO製作ドラマ『ウエストワールド』、シーズン2と3を一気見しました。なお現在最新シーズンとなる3のみ、スターチャンネルEXへの加入が必要です。 西部開拓時代のアメリカを模したテーマパーク「ウエストワールド」で人間そっくりのキャ…

2020年6月に観た映画を振り返る

6月の鑑賞映画を振り返ります。5月分はこちら。 新作 第七銀河交流(YouTube) カメラを止めるな!リモート大作戦!(YouTube) ROMA/ローマ 完成までの道(Netflix) ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 旧作 ドゥ・ザ・ライト・シング(1989…

TOHOシネマズで「風の谷のナウシカ(1984)」を観た

新型コロナウイルスの影響ということになるのか、TOHOシネマズがジブリ作品のリバイバル上映を大規模開催。2020年6月末現在、ほぼ全館で『風の谷のナウシカ(1984)』『もののけ姫(1997)』『千と千尋の神隠し(2001)』『ゲド戦記(2006)』の4作品を観る…

大友克洋監督「AKIRA(1988)」を初めて観た

TOHOシネマズにて、4Kリマスター版の『AKIRA』を観てきました。じつは原作含め全く初めての『AKIRA』です。いやはや、面白かった! 想像以上に凄かった! 「こんな作品が30年以上も前に作られたとは」などというありきたりな感想が、悔しいかな心の底から出…