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主に映画の感想文を書いています

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

映画「ドライブ・マイ・カー(2021)」感想|サーブ900、舞台演劇、チェーホフ、手話、どの話をしようか。

映画『ドライブ・マイ・カー』を観てきました。 この映画、手短に内容を説明するのがすごく難しい気がしていて。タイトルから想像するほどロードムービーじゃないし、公式のあらすじにしても観賞後に見ると「それ書いちゃっていいのかな」とか思うんですよね…

映画「由宇子の天秤(2020)」感想|信頼できない主人公と、自分勝手なけじめの物語。

映画『由宇子の天秤』を観てきました。『ゆうこのてんびん』と読みます。※前半ネタバレなし、後半ややネタバレありです。主人公・由宇子はドキュメンタリー監督。テレビで放送するセンシティブな内容のドキュメンタリー番組を鋭意製作中ですが、だんだんマス…

タイ映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち(2017)」感想|カンニングは海をも超える! 世界規模の答案伝達大作戦

本作はずばり「カンニング」映画です。タイ映画、切り取り方がいちいち面白い。そして期待を裏切らず非常に面白い作品でした。なんといっても、カンニングという題材でここまで見栄えのする映画が作れるのか!!という驚きですね。U-NEXTの作品紹介には「高…

タイ映画「ハッピー・オールド・イヤー(2019)」感想|オフビート断捨離コメディと見せかけて、重く鋭く痛い。

昨日のアトロクOPで宇多丸さんが興奮気味に語っていたタイ映画『ハッピー・オールド・イヤー』を早速観ました。 いま注目株らしいナワポン・タムロンラタナリット監督(噛まずに言えるようになっておきたい)の作品で、日本でも昨年末に劇場公開されていたと…

映画「寝ても覚めても(2018)」感想|観客と袂を分かつヒロイン。理解はできないが、好き。

柴崎友香さんの同名小説を原作とした濱口竜介監督の映画『寝ても覚めても』を観ました。すごい好きなやつでした。こんなん『ドライブ・マイ・カー』絶対観なきゃいけないですね。まとまる気がしないので見出し立てまくってどんどんいきます。ぶっきらぼうに…

映画「カンタ!ティモール(2012)」感想|東ティモールってどこ? 全く知らなかった日本との関わり

東ティモールについて扱った作品なのですが、東ティモールのことをわたしは何も知りません。地理にめっぽう弱いので、オーストラリアの真上にあるだなんて思いもしませんでした。オーストラリアなら一度行ったことがあります。いきなり身近に感じます。 とに…

映画「うたのはじまり 絵字幕版(2020)」感想|歌ってしまうんだ どうしても

ドキュメンタリー映画『うたのはじまり』を観ました。ろう者であるカメラマンの齋藤陽道さんは幼い頃から「音楽」という表現手段に隔たりを感じていたといいます。「うた」って何? わからない。好きじゃない。 やがて彼は結婚し、子供を授かりました。妻も…

映画「世界一と言われた映画館(2017)」感想|かつて山形県酒田市に存在した豊かな文化発信地、その消失と継承

山形県酒田市にかつて存在した映画館「グリーン・ハウス」のドキュメンタリー作品。かの淀川長治氏はこのグリーン・ハウスをなんと「世界一の映画館」と評したそうだ。 そんな大袈裟な、たかが街の映画館でしょ。そう舐めてかかっていたら度肝を抜かれた。回…

宇多丸さんに気持ちが届いたり、厚木拓郎さんにお会いしたり…。とある日の「ユメから出たマコト」備忘録

事後報告といいますか、だいぶ夢みたいな体験をしてしまったことの記録をですね、まだかろうじて現実味の残っているうちに書いておこうと思います。自慢……ですね、自慢です。これは自慢です。

映画「ベイビーわるきゅーれ(2021)」感想|最高に愛おしい本格ほのぼの殺し屋アクション

ああもう、こういう「知る人ぞ知る、超最高な映画」の紹介も兼ねた感想記事みたいなの、もどかしくて一番書きづらいんです。というわけで、はい、1996年生まれの超新鋭・阪元裕吾監督による最新作『ベイビーわるきゅーれ』を観てきました。最高でした。最高…

映画「シャン・チー/テン・リングスの伝説(2021)」感想|(面白いけど)そろそろついていけなくなってきた

MCU25作目『シャン・チー/テン・リングスの伝説』を観ました。前作『ブラック・ウィドウ』が公開規模小さかったので今回も面倒だな〜なんて思っていたら、今はもう普通にどこでもかかってるんですね。事情はよく知らないけれど『ブラック・ウィドウ』の不遇…

映画「太陽の塔(2018)」感想|くらくらしちゃう脳内麻薬分泌系ドキュメンタリー

ドキュメンタリー映画『太陽の塔』を観ました。そのものずばり岡本太郎の代表作「太陽の塔」について扱った作品ですが、大阪万博当時の回想のみならず2010年代の原発問題に至るまでかなり広く枝を伸ばしていく内容となっています。わたしは生まれも育ちも東…

映画「ニーゼと光のアトリエ(2015)」感想|芸術療法の先駆者、ニーゼ・ダ・シルヴェイラ医師を描いた実話

実在の精神科医ニーゼ・ダ・シルヴェイラとその功績を描いた映画『ニーゼと光のアトリエ』を観ました。時は1944年、ブラジル。ロボトミー手術や電気ショック療法などが最先端とされていた時代に、そういった荒療治とは対極にある芸術療法のパイオニアとして…

映画「行き止まりの世界に生まれて(2018)」感想|冒頭、上りかけた鉄階段を引き返す意味

ドキュメンタリー映画『行き止まりの世界に生まれて』を観ました。 イリノイ州の過疎化した町に生まれ育ったスケボー少年たちを、自身もそのコミュニティ出身である映像クリエイターのビン・リュー監督が「スケートビデオ」の延長として撮り続けていった作品…

映画「プリズン・サークル(2019)」感想|日本初、刑務所内の更生プログラムに密着したドキュメンタリー

「刑務所」は、どこかファンタジーですらある場所だと思います。「日本の刑務所」であればなおのこと。映画やドラマではよく見るけれど、実際の刑務所がどんなところなのかは全く知らない。それもそのはずで、原則カメラが入ることは許されない場所だから。…

映画「オールド(2021)」感想|秒で過ぎ去る一生、老後悔いなく往生(韻を踏みたく候)

M・ナイト・シャマラン監督の新作『オールド』を観てきました。と言いつつシャマラン作品は全く観たことがなかったんですけども(かすりもしていないことに驚き)、こういう感じなら好きかもしれない。つまり好きでした。以下、ネタバレ控え目です。「そのビ…

映画「白い肌の異常な夜」とそのリメイク版「The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ」を見比べる

ソフィア・コッポラ監督の『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ(2017)』を観ました。あれ?なんかこのお話、うっすら知ってるな。イーストウッドの初期作品あたりで似たやつなかったっけ? と思っていたら、本作は1961年のドン・シーゲル監督×クリント…

映画「鳥(1963)」感想|元祖・生物パニック映画の潔さ〈いいかげんヒッチコックを観よう④〉

のちの『JAWS/ジョーズ(1975)』などに繋がっていく「元祖・生物パニック映画」であり、文字通り「鳥に襲われる映画」であることはなんとなく知っていましたが、思いのほか鳥に襲われるだけの映画でびっくりしました。【鳥ショップで出会った男女→→お近づ…

映画「ナイスガイズ!(2016)」感想|ライアン・ゴズリングの情けなさが光る「低み」コメディ

ラッセル・クロウとライアン・ゴズリングのバディムービー『ナイスガイズ!』を観ました。2016年の作品ということで、ライアン・ゴズリングはこの年『ラ・ラ・ランド』と2本出てたんですね。 ちなみに何故いきなりこれを観たかというと、愛聴しているラジオ…

2021年8月に観た映画を振り返る〈感想記事の一覧〉

30本、あれまあ。よく観ましたね。とにかく8月は新作が豊富でした。かなり気合を入れていないとあっという間に乗り遅れてしまうので、必死でした。そして傑作・良作だらけで感想を書くのも大変……。嬉しい悲鳴です。

「新生スースク」のルーツにあるトロマ映画「悪魔の毒々モンスター」「トロメオ&ジュリエット」を観た

「トロマ映画」をご存知でしょうか。わたしはご存知じゃなくて、てっきりトンマ映画とかマヌケ映画みたいな蔑称かと思っていたのですが、正しくは映画会社「トロマ・エンターテインメント」の作品を指す言葉、つまり「マーベル映画」みたいなもんだったので…

ハングル能力検定5級を取った話③|過去問、模試、そして合格まで。

ハングル能力検定5級を取った話(勉強の記録)最終回です。時間をかければある程度は解けるようになってきましたが、いかんせん試験本番では時間をかけられません。そんなわけで、試験1週間前くらいに過去問『2020年版 ハングル能力検定試験 過去問題集 5級…

映画「白頭山大噴火(2019)」感想|必見! 確実に頭ひとつ抜けた超大作エンタメ韓国映画

「白頭山(ペクトゥ-サン)」とは北朝鮮と中国の国境付近に位置する火山の名前。この映画何がすごいって、開始早々に大地震で朝鮮半島が壊滅します。エンタメのためなら自国をも躊躇なく破壊する、これぞ韓国映画の強みよ……。しかもハリウッド映画級のクライ…