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主に映画の感想文を書いています

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ドキュメンタリー「ようこそ映画音響の世界へ(2019)」雑感|映画体験の半分は、音だ。

現在公開中のドキュメンタリー映画『ようこそ映画音響の世界へ』を観てきました。映画音楽ではなく、映画「音響」。もちろん音楽もその一部ですが、それ以外にも効果音や環境音、演者が発する声の扱いまで、「映画音響」の仕事は多岐に渡ります。しかし作品…

「EMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ」は確かに凄かった|自主映画時代の大林宣彦監督作品雑感・16mm編

商業映画デビュー以前の大林宣彦監督作品を集めたDVD『大林宣彦 青春回顧録 DVD SPECIAL EDITION』を購入、鑑賞しました。前回の記事ではDISC1の8mm作品6本について書きましたが、今回はDISC2に収められている16mmの4作品を紹介します。 なかでも1966年の『E…

映画「トラ・トラ・トラ!(1970)」雑感|真珠湾攻撃を日米共同製作で描いた作品

1970年の映画『トラ・トラ・トラ!』を観ました。タイトルは「ワレ奇襲ニ成功セリ」を意味する暗号電信文。第二次世界大戦において日米開戦の引き金となった真珠湾攻撃を描いた作品ですが、てっきりアメリカ映画だと思っていたので日米合作であることに驚き…

自主映画時代の大林宣彦監督作より「絵の中の少女(1958)」ほか雑感

商業映画デビュー以前の大林宣彦監督作品を集めたDVD『大林宣彦 青春回顧録 DVD SPECIAL EDITION』を購入、まずはDISC1に収められている8mm作品6本から観ました。 なお制作年に関してパッケージ上とその他資料で違いがあったため、ここでは著書等にフィルモ…

本多猪四郎×円谷英二の戦争映画「太平洋の鷲」「さらばラバウル」雑感|米空軍提供の記録映像も見られる作品

毎年8月を意識的に戦争映画月間にしているというライムスター宇多丸さんに倣い、今月中はとことん戦争映画を観ていきます。さて今回観たのは1953年の『太平洋の鷲』、1954年の『さらばラバウル』です。どちらも本多猪四郎監督×円谷特撮のタッグで撮られてお…

岡本喜八監督作品「ジャズ大名(1986)」雑感|アバンギャルドな幕末ジャムセッション映画

どうやら岡本喜八監督作品の集中履修期間に突入しつつあります。今回は1986年の『ジャズ大名』という映画を観ました。何やら妙ちきりんなタイトルですが、なんと『時をかける少女』の筒井康隆さんによる同名小説が原作だそうです。筒井さんは岡本監督の大フ…

映画「キャリー(1976)」雑感|ホラーテイストで痛烈に“いじめ問題”を描いた作品

ひたすら日本の戦争映画を観ていた流れから「何故!!」っていうような『キャリー』観ました。ブライアン・デ・パルマ監督による1976年公開のホラー映画で、原作はスティーブン・キング。これもスティーブン・キングなのか……。 この作品、Netflixのドラマ『…

映画「独立愚連隊(1959)」雑感|岡本喜八監督の描く戦争コメディ

岡本喜八監督の初期作品『独立愚連隊』を観ました。岡本喜八監督というと『日本のいちばん長い日(1967)』のようなどっしりとした作品を主に作られる方なのかなと思っていたのですがじつは反戦思想のなかにも喜劇性を強く持つ作家だったようで、キャリア初…

映画「激動の昭和史 軍閥」「激動の昭和史 沖縄決戦」雑感|東宝8.15シリーズを観る②

春日太一さんの新著『日本の戦争映画』から「東宝8.15シリーズ」と呼ばれる作品群のことを知った&ちょうどWOWOWが一挙放送してくれていた、ということで8.15シリーズ鑑賞記の第2回です。第1回はこちら。 今回は、似たようなタイトルですが『激動の昭和史 軍…

終戦から75年の日、池袋・新文芸坐で大林宣彦監督の戦争三部作「この空の花」「野のなななのか」「花筐」を観た

池袋の名画座・新文芸坐さんにて、「追悼・大林宣彦 〜永遠の魔法〜④ 戦後75回目の夏に…」と題された『この空の花 長岡花火物語('12)』『野のなななのか('14)』『花筐/HANAGATAMI('17)』の3本立てを観てきました。新文芸坐さん、企画ありがとうござい…

映画「日本のいちばん長い日」「連合艦隊司令長官 山本五十六」雑感|東宝8.15シリーズを観る①

春日太一さんの新著『日本の戦争映画』を読んでいて、「東宝8.15シリーズ」と呼ばれる作品群があることを知りました。その第一弾となったのが1967年の岡本喜八監督作品『日本のいちばん長い日』。2016年に『シン・ゴジラ』が大ヒットした際、岡本喜八監督の…

映画「アルプススタンドのはしの方(2020)」雑感|じつは悔しいのかもしれない自分語りの巻

城定秀夫監督の映画『アルプススタンドのはしの方』を観ました。高校演劇の人気演目を原作とした作品で、甲子園を舞台としながらもグラウンドや選手の姿は一切登場せず、「アルプススタンドのはしの方」だけが映り続ける映画です。 夏の甲子園一回戦、アルプ…

塚本晋也監督版「野火(2015)」雑感|非常にハイクオリティな戦争疑似体験映画

大岡昇平さんの同名小説を原作とした映画『野火』を観ました(1959年の市川崑監督版ではなく2015年の塚本晋也監督版)。 この映画、タイトルは知っていましたがあまりいいイメージを持っていなかったというか、趣味の悪い映画かなと勝手に遠ざけていました。…

ドキュメンタリー「大林宣彦&恭子の成城物語(2019)」ほか雑感|大林映画は“夫婦”の作品

U-NEXTで『ノンフィクションW 大林宣彦&恭子の成城物語 [完全版] ~夫婦で歩んだ60年の映画作り~』を観ました。元々はWOWOWで60分番組として放送されたもので、現在U-NEXTほかで配信されているこちら82分尺の「完全版」は昨年の東京国際映画祭にて公開され…

2020年7月に観た映画を振り返る

7月の鑑賞映画を振り返ります。6月分はこちら。 新作 レイニーデイ・イン・ニューヨーク はちどり 透明人間 海辺の映画館─キネマの玉手箱 旧作 タクシー運転手 約束は海を越えて(2017) 1987、ある闘いの真実(2017) 瞳の中の訪問者(1977) 北京的西瓜(1…

映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に(2019)」雑感|広島原爆投下から75年の日に

広島原爆投下から75年の日、片渕須直監督によるアニメーション映画作品『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を観ました。2016年に大ヒットを記録した『この世界の片隅に』に約40分の新たなシーンを追加した、アナザーバージョンの作品です。8月5日より…

大林宣彦監督作品「海辺の映画館─キネマの玉手箱」の好きなところをひたすら書きます

大林宣彦監督による永遠の最新作『海辺の映画館─キネマの玉手箱』。公開日の翌日には「とりあえず書き留めておく感想未満の何か」というかたちで感想未満の何かを書きましたが、このたび2回目の鑑賞もしてきましたので今度こそ感想を書きたいと思います。 3…

大林宣彦監督最新作「海辺の映画館─キネマの玉手箱(2020)」待ちに待った公開日、とりあえず書き留めておく感想未満の何か。

2020年7月31日、大林宣彦監督の最新作『海辺の映画館─キネマの玉手箱』を観ました。ついにこの一文を書ける日が来て感無量です。大林監督は2020年4月10日に82歳で亡くなられましたが、奇しくもその日は本来であれば本作の公開日でした。というのも新型コロナ…