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主に映画の感想文を書いています

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

小津安二郎監督作品「秋刀魚の味(1962)」雑感|軍艦マーチと失われた青春

小津安二郎監督の遺作『秋刀魚の味』をNetflixで観ました。小津作品は恥ずかしながらつい最近『東京物語(1953)』を観ただけというビギナーですが、もう一本観たことで作家性が浮き彫りになった印象です。とりあえずやはりゴリッゴリの望遠圧縮と、計算し尽…

映画「潜水艦イ-57降伏せず(1959)」雑感|“和平の片棒をかつぐ”という戦時下の罪悪感

『ハンターキラー 潜航せよ』の直後に東宝の潜水艦映画を観るという、なかなかいい感じの繋ぎをしております。先日書いた記事同様、アトロクの「元特攻隊の脚本家・須崎勝弥」特集を聴いて&春日太一さんの新著「日本の戦争映画」を読んで、のセレクトです。…

映画「ハンターキラー 潜航せよ(2018)」雑感|あのシーン、早っ!

日本の戦争映画を続けざまに観ていたら潜水艦欲が高まってしまって、これを観るなら今じゃろということで観ました、ちょっと前の話題作『ハンターキラー 潜航せよ』。元原子力潜水艦艦長の方が書いたフィクション小説を原作としているそうです。 ハンターキ…

映画「太平洋の翼」「太平洋奇跡の作戦 キスカ」「連合艦隊」雑感|“アトロク”の「元特攻隊の脚本家・須崎勝弥」特集を聴いて

TBSラジオ「アフター6ジャンクション」にて、時代劇研究家の春日太一さんによる「元特攻隊の脚本家・須崎勝弥が描いた『日本の戦争映画』 特集」という企画が放送されていました(2020年7月22日20時台)。そのなかで春日さんが紹介していた3本の太平洋戦争映…

韓国映画「新感染 ファイナル・エクスプレス(2016)」雑感|南北分断にセウォル号、負の韓国近代史を下敷きにしたゾンビ映画

「マブリー」の愛称で大人気なマ・ドンソクの魅力にわたしもクラクラしたいな、ということで手始めに『新感染 ファイナル・エクスプレス』を観ました。このタイトルは当時のTSUTAYA店頭でやたらよく見た記憶があります。ゾンビものなんて全く興味がなくスル…

映画「野いちご(1957)」雑感|タイムスリップもある、ベルイマン的ロードムービー

朝に『第七の封印』を観て、昼下がりに『野いちご』を観る、という謎のベルイマン集中履修をしました。いや、ただ単にTSUTAYA DISCASで借りてたのを一気に観ただけなんですけども。というわけで、イングマール・ベルイマン監督の『野いちご』を鑑賞しました…

映画「第七の封印(1957)」雑感|意外とコメディタッチだったベルイマン作品

イングマール・ベルイマン監督の『第七の封印』を観ました。休日の朝から頑張りました。 ベルイマン作品は何本か観てきましたが、まだ苦手という印象が強くてですね。この『第七の封印』も、有名な「死神とチェス」のシーン(きっとクライマックスだろう)を…

映画「さくら隊散る(1988)」雑感|大林宣彦監督の新作「海辺の映画館」の予習を兼ねて

新藤兼人監督による1988年の映画『さくら隊散る』を観ました。 さくら隊=桜隊とは、太平洋戦争のさなかに国策演劇、つまりお国からの指示で慰問のため地方を巡っていた移動劇団のひとつでした。東京大空襲を経て広島市内へ「劇団疎開」していた桜隊でしたが…

大林宣彦監督作品「22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語(2007)」雑感

2007年公開の大林宣彦監督作品『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』をレンタルDVDで観ました。伊勢正三さん作詞作曲のフォークソング「22才の別れ」をモチーフとした作品になっており、こちらは未見ですが2002年公開の『なごり雪』に引き続いての「大分…

大林宣彦監督作品「風の歌が聴きたい(1998)」雑感|いちばん“普通にいい”大林映画かもしれない

1998年公開の大林宣彦監督作品「風の歌が聴きたい」をレンタルDVDで鑑賞しました。 主演は天宮良さん、中江有里さん。そのほか、入江若葉さんはじめ大林組お馴染みの面子が脇を固めます。ちょっとこれは、いまのところダントツで「普通にいい」大林映画でし…

大林宣彦監督作品「三毛猫ホームズの黄昏ホテル(1998)」雑感

赤川次郎さんの同名小説を原作とした大林宣彦監督の映画『三毛猫ホームズの黄昏ホテル』をレンタルDVDで鑑賞しました。 正確には「土曜ワイド劇場」で放送されたテレビドラマのディレクターズカット版で、劇場公開はされていないとか。よく見るとフィルモグ…

映画「透明人間(2020)」雑感

エリザベス・モス主演、『ソウ』シリーズのリー・ワネル監督作『透明人間』を劇場で観てきました。ちなみに洋画で2020年本国公開の作品を観たのは、なんと今年初です! 直接的なネタバレは避けていますが、鑑賞前に読むとある程度の楽しみを削ぐことにはなる…

大林宣彦監督作品「北京的西瓜(1989)」雑感

漢字が多い(笑) 1989年の大林作品『北京的西瓜』をレンタルDVDで鑑賞しました。監督曰く、読み方は『ぺきんてきすいか』『ぺきんのすいか』どちらでもいいんですよ、二つの読み方があるんですよ、とのこと。 あらすじ 舞台は1980年代、千葉の船橋。八百屋「…

ドイツ製Netflixドラマ「DARK/ダーク」シーズン3ネタバレ雑感|ありがとう!いいSFでした!

Netflixで配信されているドイツ製作のドラマシリーズ『DARK/ダーク』。いまどき珍しく、3シーズンでスマートに完結してくれました! 前シーズンのラストからは不穏な予感しかしなかったのですが、いやいや、予想外に大満足の最終シーズンだったと思います。…

大林宣彦監督作品「瞳の中の訪問者(1977)」雑感

配信されている大林作品は見尽くしてしまいましたが、宅配レンタルのTSUTAYA DISCASにてDVDの在庫が復活してきたので一気に何本か借りました。まずは、1977年公開の2作目『瞳の中の訪問者』から。これ観れると思ってなかったので嬉しい! 原作はなんと、手塚…

韓国映画「1987、ある闘いの真実(2017)」雑感

『タクシー運転手 約束は海を越えて(2017)』鑑賞からの流れで、同じく1980年代韓国の民主化運動を描いた映画『1987、ある闘いの真実』を観ました。 あらすじ 1987年1月14日、学生運動をしていた大学生パク・ジョンチョルが警察の拷問により死亡する。警察…

韓国映画「タクシー運転手 約束は海を越えて(2017)」雑感

ソン・ガンホ主演の韓国映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』を観ました(副題付いてたの知らなかった)。ここのところ韓国文学を何冊か続けて読んでいるためか、空前の韓国ブームがきているわたしです。文化に興味を持ち始めると、俄然エンタメ摂取が楽…

男性視点での「82年生まれ、キム・ジヨン(チョ・ナムジュ 著/斎藤真理子 訳)」感想

できれば避けて通りたいと思っていた話題作『82年生まれ、キム・ジヨン』を、重い重い腰を上げて読みました。この本は韓国のフェミニズム文学で、本国では2016年の発表以来130万部の大ヒット、その後世界各国の言語で翻訳され、日本においても韓国文学として…

ウディ・アレン最新作「レイニーデイ・イン・ニューヨーク(2019)」雑感

ウディ・アレン監督の最新作『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』を観ました。先日の『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019)』に引き続き、映画館での新作映画が二作連続ティモシー・シャラメ、っていうね。シャラメ嫌いだったんじゃな…

韓国映画「はちどり(2018)」雑感&キム・ボラ監督リモート舞台挨拶のうろ覚えレポート

韓国映画『はちどり』を観ました。韓国では2019年に一般公開され、同年公開のポン・ジュノ監督作『パラサイト 半地下の家族』に次ぐ2019年の代表作として大ヒットしたのだそうです。キム・ボラ監督の長編デビュー作である本作は、世界中の映画祭で賞を獲り、…

「ウエストワールド」シーズン2・3を観て思ったこと|難しげの難しさと映画の強み

PrimeVideoで配信中のHBO製作ドラマ『ウエストワールド』、シーズン2と3を一気見しました。なお現在最新シーズンとなる3のみ、スターチャンネルEXへの加入が必要です。 西部開拓時代のアメリカを模したテーマパーク「ウエストワールド」で人間そっくりのキャ…

2020年6月に観た映画を振り返る

6月の鑑賞映画を振り返ります。5月分はこちら。 新作 第七銀河交流(YouTube) カメラを止めるな!リモート大作戦!(YouTube) ROMA/ローマ 完成までの道(Netflix) ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 旧作 ドゥ・ザ・ライト・シング(1989…