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主に映画の感想文を書いています

「アトロク映画祭2023」にて「THE BATMAN」「ガメラ 大怪獣空中決戦」を観た

アトロク映画祭のポスター

すぐにでも書きたかったのに書きそびれてしまった感想その2「アトロク映画祭2023(2/5@新宿バルト9)」をお送りします。その1は、アトロクでもお馴染み『骨噛み』を含む、「『幾多の北』と三つの短編」の話。あわせてどうぞ。


さて「アトロク映画祭2023」。かねてより愛聴しております&人生変えられておりますTBSラジオのカルチャーキュレーション番組「アフター6ジャンクション」通称アトロクの公式イベントとして、新宿バルト9にて開催されました。

今回のテーマは「ドルビーシネマ」ということで、バルト9でも導入されたばかりなドルビーシネマの真髄を堪能できる2作品を宇多丸さんがセレクト。ドルビーじゃないと暗くて観れたもんじゃないと評判の『THE BATMAN-ザ・バットマン-(2022)、そして宇多丸さんが愛するガメラ 大怪獣空中決戦(1995/4K HDR、こちらが2本立ての内訳です。

万が一でも瞬殺などとなったら悔やみきれないため、発売日は万全を期してスタンバイ。うわ、あっという間に埋まっとる、と焦りながらどうにかゲット。なんでも7分で完売したとのことで、「アトロクリスナー」の存在を肌で感じたのでした。2019年大晦日の公開生放送イベントは、もっと小さい箱で、もっと完売遅かったよなあとか。


「一律料金(アトロク)[18歳以上] 4800円」の購入画面
記念スクショ


映画祭当日(ちなみに当ブログ的に言うと「サンライズ瀬戸で行くノープラン旅」から帰ってきた翌日)。バルト9の11階ロビーはアトロクリスナーの静かなる熱気が充満し、気圧されそうな気持ちに。宇多丸さん愛用の特製MDノートが売っていたので思わず購入。これで君もムービーウォッチメンになれる。入場者特典は、投稿が読まれたときに貰える番組ステッカー。そうだよね、これが特典としては一番だよね。

ドルビーシアターへ入ると番組テーマ曲「after6」がうっすらと流れ、「これが7分間の闘いを勝ち抜いたアトロク猛者たちか……」と身震い。みんな身震いしているのか、おひとりさまばかりではないはずだけど異常に静か。開演直前、ドロッセルマイヤーズの渡辺さんと思わしき方がポップコーンとドリンク片手に駆け上がってきて密かにテンションアップ。



定刻、宇多丸さんが登場。やったー! 呼び込まれて、宇垣さん、日比さん、山本さんも登場。やったー! 山本さんは実物、初。顔が小さい。くねくねしている。うれしい。軽くトークをしてから、早速本日1本目の『THE BATMAN』上映へ。なお宇多丸さんはじめパートナー陣も、もちろん客席で一緒に鑑賞! 最後列に座っていたようです。

まず最初に、劇場さんから「付けますか?どうしますか?」と訊かれ「付けます」と即答したというドルビーシネマの紹介映像からスタート。番組内でしょっちゅう話題にしていることもあり、「これが、本当の黒。」で拍手喝采。いや、あの「黒」は拍手したくなるよね、実際。

そして今度こそ『THE BATMAN。公開当時は「あんま興味ないし長いし」でスルーしていた作品、宇多丸さんと一緒に最高の環境で観れるとなれば話は別。長いのは長いし噂通り真っ暗なんだけど、要所要所に死ぬほどかっちょいいシーンがあるおかげでずっと集中して楽しめた。前説で宇多丸さんと宇垣さんが「ポロロロンのトゥクン」な話をしたせいで本編そうとしか思えなくなり、そこは重罪ですぞ。

休憩を挟み(一段落しか感想書けなかったから根本的に興味はないのだと思う)、後半へ。うきうきな日比さんがポップコーン抱えて出てきたのが可愛すぎて悶えた。今度は「酒」も入れるんだそう。楽しそうで、なにより。本当に、なにより。番組ファン全員の思い。

2本目はガメラ 大怪獣空中決戦』。このへんの特撮ってほんとにノータッチで、興味があるかも正直分からんという感じだったのだけど、いや、めちゃくちゃ好きだった……。ここからの『シン・ゴジラ』なんだ、って今更ながら把握した。「災害としての怪獣」映画、すき……。

帰りの電車でポチポチ打っていたフレッシュな感想ツイートをそのまま貼り付け。俄然、多い。

ガメラ 大怪獣空中決戦』、すごく『シェイプ・オブ・ウォーター』っぽい音楽(逆)があって、もしやデルトロはアレクサンドル・デスプラに「こういうイメージで」って伝えたんじゃないの???って思ったんだけどわりと本当にそうな気がする。お話的にも近いし。
ガメラ 大怪獣空中決戦 4K HDR』、なんなら『THE BATMAN』よりもドルビーシネマの「黒」がバキッと出ててすごかった。それこそ拍手必至なタイトルのとことか、漆黒が広がってばーん!と来るのよね。映像の解像度も、サラウンドもすごかったなあ。
中山忍さんが好きすぎた。今の貴島明日香さんに似てる(宇内さんが観てたらびっくりしたかも)。ヒロイン良ければ全て良し、が発動した上での「それ以外も全部良し」だったのですげー映画だ。
阪神淡路にイメージ直結するような都市崩壊描写の特撮が多くて、これいつの作品なんだと思ってたら、まさしく95年公開で、でも撮影はもっと前なのね。リアリティ追求の行き着く先だったわけか……。その上で見る「1995年3月11日公開」ってなんかすごい日付だな……。
最後はかざとさん⤴︎も駆けつけて、宇内さんが来れなかったのだけ超絶残念だけど、レアな5人での生わちゃわちゃが幸せだったーー。「また明日!」なのも嬉しい。最寄りまでの終電は諦めた!
クネクネしながらイートシーンを嬉々と語る山本“ギャオスの眼”匠晃さんを生で見れたの嬉しい。わざわざ大分から駆け付けたのにほとんど喋ることもなく最後に雑な弄られをされて訝しむ生かざとさん⤴︎もよかった。いいファミリーだなあ。
映画は2本とも宇多丸さん&パートナー陣と一緒に観れたのだけど、話によればビッグサイズのポップコーン抱えた日比さんを真ん中に、両隣の宇垣パイセンとタカキ兄ちゃんがノールックで日比さんのポップコーンついばむスタイルだったようで、しあわせな絵面すぎる。

一気にセルフTogetterしてしまいましたが、『ガメラ 大怪獣空中決戦』本当によかった。こんなに好きなやつとは思わなくて、宇多丸さんも後日番組で「俺あんだけ何度も何度も何度も『いいよ』って言ってたのに、やっぱり実際観てもらうのが一番なんだね」みたいな旨のことを言っていたけれど、ほんとにそう。こういうイベント頻繁に開催して、「何度も何度も何度も『いいよ』って言ってた」やつ、どんどん強引に見せてほしいです。


いい写真すぎる。わたしの姿も、自分では見つけられます。


以上、とっても楽しかった「アトロク映画祭2023」のお話でした。

映画「『幾多の北』と三つの短編」感想|アニメーション作家・山村浩二の監督/プロデュース作を同時上映

すぐにでも書きたかったのに書きそびれてしまった感想その1「『幾多の北』と三つの短編(1/29@新文芸坐)」をお送りします。「一晩寝かせる」をしない心の強さ(および睡魔への負けなさ)が欲しい。寝かせたら終わりです。

映画「『幾多の北』と三つの短編」ポスター
映画「『幾多の北』と三つの短編」ポスター


「『幾多の北』と三つの短編」@新文芸坐

アニメーション作家の山村浩二さんが監督orプロデュースした作品を集めた「『幾多の北』と三つの短編」を池袋・新文芸坐で観てきました。

世界的に高い評価を得た山村浩二監督の『幾多の北(2021)に加え、同じく山本監督の短編ホッキョクグマすっごくひま(2021)、幸洋子さんの監督作『ミニミニポッケの大きな庭で(2022)、そしてアトロクでもお馴染み(※)矢野ほなみさんの監督作『骨嚙み(2021)の4本がパッケージングされた、企画上映というよりはひとつのオムニバス作品的なものになっております。


※「アトロクでもお馴染み」の詳細はこちら


新しくなったシン・新文芸坐へ行くのは初めて! 館内は写真などで見るより変貌してはおらず、安心しました。今回の上映、すっかり頭から抜け落ちていたのですが、アトロクの『骨噛み』音声ガイド制作プロジェクトにて視覚障害者モニターとして制作に関わった石井健介さんからお誘いいただいて、売り切れ直前なんとか滑り込み、行くことができました。観れてよかった…!

オープニングを飾るのは『ミニミニポッケの大きな庭で』。フレッシュな感想がよかろうと思いましたので、鑑賞当日のTwitterからわたしの感想をコピペすることにします。

幸洋子監督の『ミニミニポッケの大きな庭で』は、画用紙に描いた子供の落書きみたいな絵がサイケデリックに動き回り、正気じゃない声が響き渡る「ヤベぇヤツ来た」系作品。ヤベぇの好物なので終始にこにこしながら観た。たまらぬ。オープニングアクトに最適。

これ、ほんと度肝抜かれましたね。新文芸坐の大きなスクリーン、それもかなり前の方で観たので、いきなりとんでもないインスタレーションを見せられたような体験でした。原画はパラパラ漫画用の小さな紙だそう。それを巨大スクリーンに投影させることによる、圧倒的アート感。こういう小規模な作品を映画館で観る必要性、正直そこまで感じていなかったのですが、一発で「こりゃ映画館でなきゃ」と理解しました。

続きましてホッキョクグマすっごくひま』。同じくフレッシュなツイート引用でまいります。

“白”山村監督の『ホッキョクグマすっごくひま』、すっごく好きだった。絵巻物のように流れていく水墨画タッチのゆるい動物たちと、いかしたビートに乗せられた和英ことばあそび。なんちうセンスじゃ、とただただ感動。いや感動するような映画でもないのだけど。

ゆる〜〜〜くて、センスあまりにもよくて、いろんな概念が覆されるような逸品でした。いつまでも観ていたかった。絵コンテも絵巻物スタイルだったのがすごい。なお「“白”山村監督」というのは、上映後のトークで映画評論家の中条省平さんがおっしゃっていたこと。


短編の最後は、お待ちかね!矢野ほなみさんの監督作『骨噛み』。前述のとおりアトロクリスナーにはお馴染みの作品ですが、矢野さん曰く、アトロクでの「音声ガイド付き全編上映(ラジオでの「映画上映」)」を聴いてその答え合わせに来られる方が多かったそうです。

アトロク音声ガイドプロジェクトでお馴染みの『骨噛み』は、しかし大スクリーン・大音響で観るのは初めてで、点描のうごめきやライトボックスの眩しさを今までで一番感じた。灯台からぐるっと放たれる光の粒子がすごくきれいだった。いらっしゃらないと思っていた矢野監督にお会いできたのもうれしい!

Twitterで感想を見ていたら、灯台の光が印象的だったと書かれている方が他にもいたので、あの大きさで観ることにより際立つ部分だったのだろうなあと思いました。そして、矢野さんが担当された『TRIGUN STAMPEDE』のED映像を観ることでその思いはさらに強まり。これ、すごいです……。

同じ点描アニメーションでも、白黒反転させることでこんなに印象が変わるなんて。矢野さんのアニメーションに底知れない可能性をあらためて感じたのでした。

そして、本作のメインアクトと言いましょうか、山村浩二監督による長編アニメーション作品『幾多の北』。こちらメディア芸術祭のサテライト会場だったシネマ・チュプキ・タバタにて『骨噛み』と共に上映されていましたが観れるタイミングがなく、今回初鑑賞となりました。

“黒”山村監督の『幾多の北』。こーれは、すごい…。詩的なテロップで進んでいくスタイルは無声映画っぽくもあるし、自主映画時代の大林宣彦作品っぽくもあるし、でも映像や音の規模感は全くインディペンデントじゃなくて、圧倒されっぱなし(たまに睡魔)の1時間でした。これは映画館でなきゃ。

上映後のトークもすごくおもしろかったです。山村監督、音楽ありきの作品を作られる方なんだなあというのが2作品だけでもよく伝わってきた。『幾多の北』のラスト、しっかり描かれているバンドが好き。ホルンのベルアップみたいなの好き。

ほんっとに、すごかったです。チュプキでは当然ながら音声ガイド付きで上映していたはずですけど、「これどうやってガイドしてたの???」と思ってしまうような作品。映像もすごければ、サウンドデザインもすごい。音響デザインの笠松広司さんは、それこそ今話題沸騰の『THE FIRST SLAMDUNK』なども担当されている方! 映画にとっていかに「音」が大切かを再確認させてくれます。

「『幾多の北』と三つの短編」はこれから全国に公開拡大されていくとのことで(チュプキでも3月後半、上映します)、お近くの劇場でかかる際には是非ご鑑賞をおすすめします。スクリーンかぶりつきで観るハンドメイドのアニメーションたち、作品規模に対してめちゃくちゃインパクトの大きい体験でした。これは映画館で観るべき映画です。