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主に映画の感想文を書いています

映画「ウィッカーマン(2006)」雑感

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アリ・アスター監督の『ミッドサマー(2019)』を語るときによく出てくる映画『ウィッカーマン』。本来は1973年の作品を指すようなんですが、2006年のリメイク版しか観れなかったのでとりあえずそれを。

あらすじ

警官エドワードニコラス・ケイジのもとに、かつての婚約者から手紙が届く。行方不明になった娘の捜索を依頼するものだった。彼女はエドワードと別れた後、サマーズアイルという孤島で暮らしていたらしい。消印もない手紙を不審に思いながらも、エドワードは島へ単身乗り込む。

雑感

なるほどミッドサマー、って感じの作品でした*1。1973年版を知る人からすると評判は良くないみたいですが、こういう場合オリジナルを知らないというのはいいことです(笑) 普通に楽しめました。しかし、やってることは『ミッドサマー』とそう変わらないのにアリ・アスター監督のほうが遥かに悪趣味と感じてしまう不思議。

個人的にはですね、出てくる女の人たちがいちいち好み!っていうところで、わりと勝利でした。『マンマ・ミーア!』シリーズのアマンダ・セイフライドみたいな元婚約者ウィロー、艶かしい魅力の教師シスター・ローズ、B級のエロさ漂うシスター・ハニー、妙に顔のいい老女シスター・サマーズアイルetc...いいなあこの島の女性たち刺さるわ…っていう。

で、対する黒一点(ではないが存在感的には一点の)エドワードは逆に好かん、っていう。いくら事情が事情でもいきなりやって来てあんな荒っぽい捜査されたら島民も嫌な顔するでしょう。それ以前の問題で、ニコラス・ケイジ、ああいう顔の男、生理的に苦手(ごめん)。

そんなわけで、最終的な展開にうっかり驚きつつも、ざまーみろ!な気持ちのほうが強かったのでございました。次なる獲物を狙うラストシーンも好き。基本的にわたし、女が男めった打ちにする映画、好き。男のくせに。

1973年オリジナル版の予告を観る限りかなり踏襲してそうなので(しかしこれだけ評判が良くないのは何か大事な要素がすっぽり抜けているのか、もしくは元があまりにカルト的作品なのか、それとも両方か)観てみたいんですが配信されてるところはなさそう。『ミッドサマー』人気にあやかって、PrimeVideoの課金コンテンツあたりで何卒。

(2020年51本目/U-NEXT)

ウィッカーマン (字幕版)

ウィッカーマン (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
キリング・イヴ』視聴のためU-NEXT契約中なので、今月はU-NEXTをがしがし使います。

*1:全体的な雰囲気はもちろんとして、蜂まみれの人間が幻覚的に登場するシーンは『ヘレディタリー/継承(2018)』の某シーンを連想するものだったし、懲らしめられてしまったパイロットが全身になんか詰められてる感じはまさにだし、なんといってもクマ。クマよ。

こんな既視感は嫌だ|映画「コンテイジョン(2011)」雑感

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状況が状況でございますので、まあパンデミック映画の一つも観てみようかという気にもなったりするわけです。そこで手始めに、近頃よくタイトルを聞く2011年の映画コンテイジョンを観てみました。初見です。

出演はマット・デイモングウィネス・パルトロー*1ローレンス・フィッシュバーンジュード・ロウetc...そうそうたる面子が名を連ねます。監督は知らないまま観て、エンドロール冒頭の「スティーブン・ソダーバーグ」でえっ!と驚き。ソダーバーグ作品だったとは。

あらすじは書くほどでもありません。新型感染症の脅威に翻弄される関係各所と、徐々にパニックを起こしていく民衆心理のお話。つまり、我々の今。この映画がどのような意味で話題になっているのかというのは、以下の記事などを読んでいただくのが手っ取り早いと思います。

とにかくこの映画を観て思うのは、ひたすら強烈な既視感。え、これ2011年って嘘でしょ、2021年の映画じゃないの?? なんて言いたくなってしまうほど、新型コロナウイルスに踊らされる2020年をモデルとして作られたとしか思えない、そんな映画でした。

例えば序盤。感染が拡大していき、学校を閉鎖したほうがいいかもしれないという話が出る。すると「仕事を休めない親はどうするの?」と嫌な顔をされる。または例えば同じく序盤、専門家の会話の中で「クラスター」というワードが出る。後半へいくと今度は買い占めが起きたり、ドラッグストアで乱闘が起きたりする。マスクがなくてバンダナを巻いているような人もいる。

上に挙げたのはほんの一部に過ぎなくて、2020年の我々的にはもう全てが「知ってる」「見てる」状況なわけです。制作当時はあくまでフィクションであったはずの映画が、全くフィクションではなくなってしまっている怖さ。地味めな展開がさらにリアルで怖い。アメリカらしく「縮小開催」のプロムが実質ラストシーンとなっていますが、さてこれをどう見るか…という気持ちになります。

この映画を今観るメリット、それは「今この状況を客観的に見れる」ことだと思います。まあそうしたところで、ドラッグストアで乱闘してる人はこんなところ読んでないでしょうし、せいぜい「手を洗おう」くらいの引き締めですが。引き続き手洗いうがい、サバイブしていきましょう。

(2020年50本目/Netflix

コンテイジョン (字幕版)

コンテイジョン (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
コンテイジョン [Blu-ray]

コンテイジョン [Blu-ray]

  • 発売日: 2012/09/05
  • メディア: Blu-ray
なお特に序盤、今の心境で観ると気分が悪くなってきたりすることも考えられますので(なった)、わざわざ無理して観なくてもいい作品です。観たところで今の現実が描かれてるだけ。…とはいえ、すごい映画です。この映画を観るベストタイミングは皮肉にもきっと今です。

*1:ただしグウィネス・パルトロー目当てに観てはいけない。